雪国の屋根から、太陽の屋根へ。金沢の空が変わった今、屋根に求められる5つの役割
断熱、気密、デザイン、防犯、窓、外壁。「金沢の家づくり」シリーズも7回目になりました。今回は、家のいちばん上で家族を守っている屋根の話です。
屋根は、家の中で最も見えにくく、最も語られない部位かもしれません。地上からは形と色くらいしか分からず、完成すれば誰も上がることはありません。けれど屋根は、雨・雪・風・太陽・地震のすべてを最初に受け止め、そして今の金沢ではエネルギーを生み出す場所にもなっています。
金沢の空は、この25年で変わりました。屋根に求められることも、それに合わせて変わっています。地域のデータをもとに、私たちメープルホームの屋根の考え方をお伝えします。
かつて金沢の屋根の主題は「雪」だった。今は?
市場調査の「2000年と今」を比べたデータにこうあります。2000年頃の金沢の住宅は「断熱+耐雪が主題」だった。金沢の屋根はまず、雪の重さに耐え、雪を安全に処理するために設計されてきました。
数字を見ると、最深積雪は2000年の38cmから2024年には18cmへ半減。一方で年平均気温は14.5℃から16.5℃へ+1.8℃、猛暑日は3日から22日へと7倍です。
雪は減り、暑さは増えた。屋根が受ける負荷は、「上に積もる重さ」から「上から降り注ぐ熱」へと、主役を変えつつあります。ただしこれは「雪を考えなくていい」という意味ではありません。2011年と2018年には記録的な豪雪が北陸を襲い、2018年には空き家の倒壊や雪下ろしでの負傷が相次いだと記録されています。
つまり今の金沢の屋根は、雪に耐える力を残したまま、熱と雨と地震と、そして太陽の活用にも応えるという、以前より多くの役割を担っているのです。
金沢の屋根に求められる5つの役割
① 雨を確実に処理する
2008年の浅野川豪雨では60分に138mmという観測史上最多の雨が降りました。2022年、2024年にも県内で豪雨被害が続いています。金沢の屋根は、日常の長雨と、こうした短時間の猛烈な雨の両方に対応しなければなりません。
屋根材の性能以上に大切なのが、屋根材の下にある防水層(ルーフィング)と、雨水を集めて流す軒樋・竪樋の容量です。想定を超える雨が降ったとき、樋があふれて外壁を伝い、サッシまわりから室内へ入る。豪雨時の雨漏りは、こうした経路で起きることが少なくありません。屋根は、外壁の回でお話しした「継ぎ目と取り合い」を守る最初の防波堤です。
② 夏の熱を室内に入れない
夏の日中、屋根の表面温度は60〜70℃に達します。この熱が屋根から天井へ伝わり、2階の部屋が夜まで暑い、という家は少なくありません。共働きのご家庭で、お子さんの部屋が2階にある場合、夏の夜の寝室の暑さは家族の睡眠の質に直結します。
猛暑日が7倍になった金沢では、屋根の断熱と、屋根と天井の間の熱を逃がす通気の設計が、冷房費と快適さを大きく左右します。「北陸は夏が涼しいから屋根断熱は薄くていい」という前提は、もう成り立ちません。
③ 地震で家を軽く、強く保つ
2024年の能登半島地震では金沢市内でも震度5強を観測しました。建物にとって屋根の重さは、地震時に頭の上で振り回される重量です。屋根が重ければ揺れは大きくなり、構造への負担が増えます。金沢の伝統的な瓦屋根は美しく耐久性も高い一方で、重量という点では耐震上の負担にもなります。
屋根材の重さと構造のバランスをどう取るか。これは屋根の見た目の問題ではなく、家族の安全に直結する設計判断です。
④ 太陽を受け止め、エネルギーに変える
気候の変化は、屋根に新しい役割も与えました。日照時間が長くなり、暑さが増したということは、屋根に届く太陽のエネルギーが増えたということでもあります。
金沢は「日照が少ないから太陽光は向かない」と言われてきましたが、実際にはZEH(ゼロエネルギー住宅)の家で光熱費ゼロに近い暮らしをされているお客様もいます。屋根の向きと勾配を設計段階から太陽光を前提に決めることで、金沢でも十分に発電できる屋根はつくれます。
⑤ 軒で、壁と窓と暮らしを守る
窓の回、外壁の回で繰り返しお話しした「南面900mmの庇」。金沢の太陽高度は夏至の正午で約77°、冬至で約30°。この47°の差を活かせるのが、屋根から連続する軒の出です。
深い軒は、夏の日射を窓の上で止め、冬は部屋の奥まで光を届け、雨から外壁を守り、紫外線による劣化を遅らせます。金沢の町家の軒が深いのは、雨と雪と日射に対するこの土地の先人の答えです。屋根の形は、その下にある壁と窓と暮らしをどう守るかを決めています。
メープルホームの屋根:性能と太陽を「最初から」設計に組み込む
太陽光を後付けではなく、設計の前提に
メープルホームは、注文住宅とあわせて太陽光発電システムを事業として手がけている会社です。そして私たちが提案しているパッシブZEHは、風や太陽の光といった自然の力を最大限に生かす設計と、太陽光発電による創エネを組み合わせた住まいです。
太陽光パネルは、完成した家の屋根に後から載せることもできます。しかし、屋根の向き・勾配・面積・配線経路・パネルの重量を最初から設計に織り込んだ家と、後付けの家では、発電効率も、屋根の防水や構造への影響も違います。私たちは「太陽光を載せる屋根」を、間取りを考える最初の段階から設計します。
断熱・気密は屋根まで一体で
断熱と気密の回でお話ししたHEAT20 G2(UA値0.46以下)という数値は、壁と窓だけでは達成できません。家全体の熱の出入りを計算するUA値には、屋根(または天井)からの熱の流出・流入が大きく含まれています。
私たちが採用するLIXILのスーパーウォール工法は、壁だけでなく屋根までを含めた建物全体を高断熱・高気密の外皮として設計する考え方の工法です。屋根の断熱と気密を壁と同じ水準で確保し、全棟気密測定で家全体の隙間を確認する。夏の屋根の熱を室内に入れず、冬の暖かさを屋根から逃がさないことが、2階の寝室の快適さと光熱費の両方を守ります。
耐震等級3+制震で、屋根の重さを構造で受け止める
メープルホームは耐震等級3を基本とし、揺れそのものを吸収する制震を組み合わせています。太陽光パネルを載せると屋根の重量は増えますが、その重量を前提に構造計算を行い、耐震等級3を確保する。これが「太陽光を最初から設計に組み込む」ことのもうひとつの意味です。
施工品質を第三者の目で
屋根の防水層や板金の取り合いは、屋根材で覆われた後は誰にも見えません。私たちが第三者機関による監査を取り入れているのは、こうした「見えなくなる部分」の施工を、外部の目で確認するためです。多雨の金沢で屋根を長持ちさせる鍵は、素材よりも施工の確かさにあります。
平屋という選択と、屋根の関係
市場調査では、対象エリアの50〜60代人口が30代の2.4倍にのぼり、平屋・コンパクトな住まいへの需要が高まっていることが指摘されています。私たちの規格住宅にも平屋タイプのTRETTIO VALOがあります。
平屋は、建物の面積に対して屋根の面積が大きくなります。これは太陽光を載せる面積が広く取れるという利点であると同時に、屋根の断熱と雨仕舞いの重要性がさらに高まるということでもあります。30〜40代のご夫婦で「将来は1階だけで暮らせるように」と平屋やそれに近い間取りを考える方も増えていますが、その場合は屋根の性能がそのまま暮らしの快適さになる、とお考えください。
災害時に、屋根が家族を守る
市場調査は、金沢周辺で2000年以降に10件の重大災害が起き、地震のあとに豪雨が重なる「複合災害」の時代に入ったと指摘しています。そして、停電・断水の中でも自宅で生活を続けられる「在宅避難できる家」が、これからの住宅の評価軸になるとしています。
屋根は、その在宅避難を支える部位です。太陽光発電と蓄電池があれば、停電時も冷蔵庫や照明、情報端末の電源を確保できます。屋根に降った雨水を貯めて生活用水に使う雨水利用も、屋根があってこそ成り立つ仕組みです。屋根は「雨風を防ぐもの」から「災害時に家族を支えるインフラ」へと、役割を広げています。
金沢の空を、家族の味方にする
雪は減り、雨は激しくなり、夏は東京並みに暑くなり、そして太陽のエネルギーは増えた。金沢の屋根は、この変化をすべて受け止める場所です。
屋根の形と色を選ぶとき、その屋根が雪と雨をどう処理し、熱をどう防ぎ、地震にどう耐え、太陽をどう使うか。私たちは、そのすべてを最初の打ち合わせから一緒に考えます。この街の空を知っている工務店だからこそ、できる提案があります。
出典:気象庁「金沢」観測所データ・「災害をもたらした気象事例」、内閣府防災、石川県令和6年能登半島地震被害状況(第154報)、国勢調査、住民基本台帳ほか(Amigo建築コンサルティング「金沢市域住宅市場調査」2026.06より)