高齢者が暮らす家の暑さ対策と安全なリフォーム
「実家の父や母が、暑くてもエアコンをつけたがらない」「もったいないから、と我慢してしまう」。金沢で家づくりやリフォームの相談を受けていると、こうした声を本当によく聞きます。
ご本人は「昔から夏はこうだった」と思っているかもしれません。けれど、金沢の夏は昔とは違います。そして高齢の方の体は、暑さそのものへの感じ方が若い頃とは変わっています。今回は、高齢者が暮らす家の暑さ対策と、安全なリフォームについて、金沢のデータと私たちメープルホームの考え方でお話しします。
「昔から平気だった」は、もう通用しない
気象庁の金沢観測所のデータでは、年平均気温は2000年の14.5℃から2024年には16.5℃へ、25年で+1.8℃上昇しました。猛暑日(35℃以上)は3日から22日へと7倍以上に増え、真夏日は45日から79日に拡大しています。今の金沢の暑さは、東京・大阪とほぼ同じ水準です。
ご両親が子育てをしていた30年前、40年前の金沢の夏は、今よりずっと涼しかったのです。当時は「エアコンなしでも平気だった」というのは、決して思い込みではなく、事実として今より涼しかったからです。しかし今、同じ感覚で夏を過ごせば、体には想像以上の負担がかかります。
高齢者の熱中症が、なぜ見えにくいのか
高齢の方の熱中症には、若い世代とは違う特徴があります。
まず、加齢によって暑さやのどの渇きを感じにくくなります。本人が「そこまで暑いと思っていない」まま、体温はじわじわと上がっていきます。また、エアコンの電気代を気にして使用を控える方も多く、「もったいないから」という気持ちが、結果的に健康のリスクを高めてしまうことがあります。
さらに、日中一人で過ごす時間が長い高齢者は、体調の変化に気づく人がそばにいません。共働きのご家庭で、ご両親が近くに、あるいは離れて暮らしている場合、日中の実家の室温は、意外と見落とされがちなポイントです。
環境省・消防庁の統計でも、熱中症による救急搬送のうち、高齢者では住居内での発生が大きな割合を占めることが知られています。「外に出なければ安全」ではなく、家の中にこそ、見えにくいリスクがあります。
金沢に多い「高齢のご家族がいる家」という現実
市場調査によれば、対象6市町の人口で最大のボリュームは50代であり、50〜60代の合計は30代の2.4倍にのぼります。この世代の親世代である70代以上の人口も厚く、金沢は高齢のご家族が暮らす家が非常に多い街です。
私たちメープルホームでも、高断熱・高気密の住まいが評価され、二世帯住宅の施工が増えています。「冬でも快適な住まいは、高齢な両親も安心して暮らせる」というお声を実際にいただいていますが、この安心は冬だけでなく、夏の暑さ対策としても同じように当てはまります。
高齢者にとっての「家の中の危険」は、暑さだけではない
高齢者の暮らす家のリフォームを考えるとき、暑さ対策とあわせて欠かせないのが、安全性の視点です。金沢という土地の条件をふまえると、次のようなリスクが重なります。
温度差によるヒートショック
冬、暖かいリビングから寒い脱衣所や浴室、トイレへ移動したときの急激な温度差は、血圧の変動を引き起こし、高齢者の健康リスクとなります。断熱性能の低い家では、家の中の温度差が大きく、この危険性が高まります。夏の暑さ対策として断熱リフォームを行うと、同時に冬のヒートショック対策にもなるのは、断熱・気密が季節を問わず家全体の温度差を小さくする性能だからです。
段差と転倒
古い家には、玄関や部屋の間、浴室の出入り口などに段差が多く残っています。加齢とともに転倒のリスクは高まり、リフォームでは断熱・暑さ対策とあわせて、段差の解消や手すりの設置を検討する価値があります。
地震への備え
市場調査によれば、2024年の能登半島地震で金沢市内は震度5強を観測し、一部破損は4,077棟にのぼりました。高齢者が一人で家にいる時間が長いご家庭にとって、耐震性能の確認も、暑さ対策とあわせて考えておきたい要素です。
暑さ対策のリフォームは、こうした複数の安全課題を同時に見直す機会でもあります。
メープルホームの提案:暑さ対策と安全性を、まとめて見直す
まず、今の家の状態を測る
私たちのリフォームでは、専門家が現在のお住まいの断熱性能を測定・診断します。ご実家やご両親の家であれば、まずどれだけの熱が出入りしているのかを数値で把握することから始めます。「なんとなく暑そう」ではなく、具体的な根拠をもとに、優先すべき改修箇所をご提案します。
スーパーウォール工法リフォームで、家全体を均一な温度に
私たちの断熱リフォームの核となるスーパーウォール工法リフォームは、新築で採用しているLIXILのスーパーウォール工法の技術を既存住宅に応用したものです。壁や窓を高断熱・高気密のパネルとサッシに改修することで、リビングだけでなく、寝室、廊下、脱衣所まで、家全体の温度差を小さくします。
実際に私たちのスーパーウォール工法の家にお住まいのご家族からは、「エアコンのあるLDKと、ない部屋の温度差が1℃ほど」という声をいただいています。この「どこにいても同じ温度」という性能は、暑さへの感覚が鈍りがちな高齢の方にとって、エアコンを我慢しても大きな危険にさらされにくい、安全側に働く環境をつくります。
全棟気密測定で、効果を数値で確認
リフォームでも新築と同じく全棟気密測定を実施し、性能報告書としてお渡しします。ご本人やご家族が「本当に効果があったのか」を実感しにくい断熱リフォームだからこそ、数値で確認できることには意味があります。
段差解消・手すり設置とあわせて計画
暑さ対策の断熱・気密リフォームと同時に、バリアフリー化(段差の解消、廊下や浴室への手すり設置など)をあわせて計画することで、工事の回数や足場費用を抑えながら、暑さと転倒リスクの両方に対応できます。
太陽光発電で、電気代の心配を減らす
「エアコンをつけると電気代が心配」という高齢者の気持ちに寄り添う意味でも、太陽光発電の設置は効果的です。私たちが提案するパッシブZEHの考え方は新築が中心ですが、既存住宅への太陽光発電の設置についてもご相談いただけます。電気代の不安が軽くなれば、「もったいないから我慢する」という選択を減らすことにつながります。
「実家の夏」を、家族みんなで見直す機会に
猛暑日が7倍になった金沢で、高齢のご家族が暮らす家の暑さ対策は、後回しにできない課題になっています。ご本人は「大丈夫」と言うかもしれませんが、暑さへの感覚が鈍っていることこそが、リスクの本質です。
断熱・気密のリフォームは、暑さ対策であると同時に、冬のヒートショック対策、転倒防止、そして電気代の不安を減らすことにもつながります。お盆やお正月にご実家に帰ったとき、家の中の温度や段差を、少し意識して見てみてください。気になることがあれば、私たちにご相談ください。この土地の気候と、ご家族それぞれの暮らしを知る工務店として、実家の家づくりも一緒に考えます。
出典:気象庁「金沢」観測所データ、環境省・消防庁 熱中症関連統計、国勢調査、住民基本台帳、石川県令和6年能登半島地震被害状況ほか(Amigo建築コンサルティング「金沢市域住宅市場調査」2026.06より)