断熱材マニア

マニアな知識 / 断熱材

等級6は、ゴールではなく入口だ。

断熱等性能等級6のUA値は、5〜7地域で 0.46。けれど同じ6地域の中でも、1月の日照時間には3.4倍の開きがあります。同じ数字を取っても、同じ家にはならない。断熱材の種類・必要な厚み・工法・費用を、一次資料の数値からたどります。

0.46断熱等性能等級6が求めるUA値(5・6・7地域)。令和4年10月1日施行(国土交通省)
3.4倍同じ6地域どうしで、1月の日照時間にこれだけ差がつく。甲府209.1時間に対し金沢62.3時間(気象庁 平年値1991–2020)
53mm高性能グラスウール16K 100mmと同じ熱抵抗に必要なネオマフォームの厚み。真空断熱材なら11mm
47.5%基礎断熱住宅のシロアリ被害のうち、1階の柱など構造材まで達していた割合(日本しろあり対策協会 会員715社調査)
厚

まず、必要な厚みを触ってみる

断熱材の性能はブランド名ではなく、熱伝導率 λ(ラムダ)という一つの数字で決まります。必要な厚みは 厚さ = 必要熱抵抗値 R × λ × 1000 という割り算でしかありません。地域と部位を変えて、同じ性能に何mm要るのかを見てください。

必要な熱抵抗値 R2.2
高性能グラスウール16K(λ0.038)84 mm
ネオマフォーム(λ0.020)44 mm
柱105mmへの納まり余裕あり
木造軸組・充填断熱の値です。単位は ㎡·K/W。
必要な厚み(横軸は0〜360mm) 柱・垂木の見付けに納まらない厚み 105 / 120 / 140mm の目安線

この計算がやっていること

厚さ [mm] = 必要熱抵抗値 R [㎡·K/W] × 熱伝導率 λ [W/(m·K)] × 1000 熱抵抗 R = 厚さ d [m] ÷ 熱伝導率 λ。国土交通省・建築研究所の外皮計算と同じ定義です(建築研究所「熱貫流率及び線熱貫流率」)。

断熱材の優劣は、この λ ひとつに集約されます。λ が半分なら、厚みも半分で同じ性能。逆に言えば、どんな高性能材を使っても、厚みが足りなければ熱抵抗は出ません。営業トークで「高性能な断熱材です」と言われたら、聞くべきは商品名ではなく λ と厚みの2つです。

ここが最初の落とし穴です。6地域の外壁に求められる熱抵抗は、仕様基準(等級4)でわずか 2.2。高性能グラスウール16K なら 84mm、つまり105mm柱の充填でおつりが来ます。2025年4月から義務化された「省エネ基準適合」とは、この水準のことです。

そして等級6には仕様基準そのものが存在しません。厚さの早見表を見て積むだけでは等級6に届かず、必ずUA値の計算が要ります。

仕様基準の必要熱抵抗値(木造軸組・充填断熱)

部位1・2地域3地域4地域5・6・7地域8地域
屋根6.64.64.64.60.96
天井5.74.04.04.00.78
壁3.32.22.22.2—
床(外気に接する部分)5.25.23.33.3—
床(その他)3.33.32.22.2—
土間床等の外周部(外気に接する)3.53.51.71.7—
土間床等の外周部(その他)1.21.20.50.5—
出典:国土交通省 仕様基準(平成28年国土交通省告示第266号 関連資料)。3地域は屋根・天井・壁が5〜7地域と同値である一方、床と土間だけが1・2地域と同じ寒冷地仕様になっている点が特徴的です。4地域は5〜7地域と全部位で同一です。

誘導基準(等級5相当)では屋根が天井より厳しい

4〜7地域の誘導基準(充填断熱)では、屋根 5.7 に対して天井 4.4。屋根断熱を選んだ瞬間、天井断熱の約1.3倍の熱抵抗を求められます。外張り断熱なら屋根 4.8、壁 2.3 と、充填断熱より低い値で済みます(木部の熱橋がない分を制度が織り込んでいるためです)。

部位(4〜7地域・誘導基準)充填断熱外張断熱
屋根5.74.8
天井4.44.8
壁2.72.3
床(外気に接する部分)3.43.1
床(その他)2.2—
土間床等の外周部(外気に接する)1.71.7
土間床等の外周部(その他)0.70.7
出典:国土交通省「建築物省エネ法 木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック 誘導基準編 4〜7地域版」。なお「なぜ屋根のほうが厳しいのか」という理由は告示本文には書かれていません。実務では、屋根面が日射を直接受け、小屋裏という緩衝空間を持たないこと、勾配分だけ面積が増えることが説明として使われますが、これは業界の説明であって一次資料の記述ではありません。
基

等級6とは、何を約束した数字なのか

断熱等性能等級6・7は令和4年10月1日に施行されました。それまでの最上位は等級4——1999年の次世代省エネ基準とほぼ同水準のまま、20年以上動かなかった基準です。等級が一気に3段増えたことで、「等級◯」という言葉だけが独り歩きしはじめました。

断熱等性能等級別のUA値(戸建住宅)

等級1地域2地域3地域4地域5地域6地域7地域8地域
等級70.200.200.200.230.260.260.26—
等級60.280.280.280.340.460.460.46—
等級5(ZEH水準)0.400.400.500.600.600.600.60—
等級4(省エネ基準)0.460.460.560.750.870.870.87—
等級30.540.541.041.251.541.541.81—
等級20.720.721.211.471.671.672.35—
出典:国土交通省「住宅性能表示制度における省エネ性能に関する見直し」。8地域は暖房を想定しないためUA値の基準がなく、ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)だけが問われます。等級5の施行は令和4年4月1日、等級6・7は令和4年10月1日(公布は令和4年3月25日)。

「等級6=HEAT20 G2」は、5地域だけ成り立たない

国土交通省の審議会資料には、等級6はG2仕様、等級7はG3仕様に相当する基準を採用。ただし5地域のUA水準について6地域と同水準とすると明記されています。つまり5地域だけ、等級6を取ってもHEAT20のG2には届きません。

水準1・2地域3地域4地域5地域6地域7地域
HEAT20 G10.340.380.460.480.560.56
HEAT20 G20.280.280.340.340.460.46
等級60.280.280.340.460.460.46
HEAT20 G30.200.200.230.230.260.26
等級70.200.200.230.260.260.26
橙色が「等級とHEAT20がずれる」セルです。5地域(仙台・水戸・宇都宮・富山など)では、等級6のUA 0.46 に対しG2は 0.34。本当にG2をやるなら等級6の要求より 0.12 厳しい数字を狙う必要があります。出典:国土交通省 社会資本整備審議会 資料2-1、HEAT20 住宅シナリオと外皮性能水準。

等級が約束しているのは「室温」ではなく「エネルギー」

国が等級6・7の水準をどう決めたかというと、暖冷房にかかる一次エネルギー消費量の削減率(概ね30%削減、概ね40%削減)を目安として水準を設定した、と審議会資料に書かれています。等級6=等級4比で約30%削減(地域幅 27〜37%)、等級7=約40%削減(39〜56%)。「等級6なら室温が◯℃」という国の公式な数字は存在しません。

室温の目安として引用できるのは、HEAT20が示す冬期の最低体感温度(3%タイル値)のシナリオだけです。これはHEAT20の試算であって国の基準ではない、と主語を明示して使うべき数字です。

HEAT20の水準1・2地域の最低体感温度3〜7地域の最低体感温度設定の考え方暖房負荷削減率
G1概ね13℃を下回らない概ね10℃を下回らない非暖房室の結露防止約20〜45%
G2(≒等級6)概ね15℃を下回らない概ね13℃を下回らない温度むらを小さくし居住快適性を向上約35〜60%
G3(≒等級7)概ね16℃を下回らない概ね15℃を下回らない温度ストレスの軽減約55〜80%
G3の最低体感温度(1・2地域16℃/3〜7地域15℃)は、HEAT20サイトからの読み取りに揺れがあったため参考値として扱ってください。G1・G2は複数回の確認で一致しています。削減率は平成28年基準(等級4)比で、地域によって幅があります。同じG2でも、暖房負荷の削減率は地域によって35%〜60%と倍近い開きがある——この一点だけでも、「UA値が同じなら結果も同じ」が成り立たないことが分かります。出典:HEAT20。

UA値は「平均値」である、という理解

UA = q ÷ ΣA = [ Σ(Ai × UH,i) + Σ(LF,j × UFH,j) ] ÷ A q=内外温度差1℃あたりの外皮熱損失量 [W/K]、Ai=部位の面積、UH,i=温度差係数を勘案した熱貫流率、LF,j=基礎等の外周長さ、A=外皮等面積の合計。出典:建築研究所「住宅の外皮性能計算」

分母が外皮面積の合計である以上、同じ断熱仕様でも、凹凸の少ない総二階の四角い家のほうがUA値は良く出ます。逆に、平屋・L字・下屋の多い家は外皮面積が増えるので不利になる。UA値は建物の形状も含んだ指標であって、断熱材の性能そのものではありません。

そして分母には窓も入ります。窓を小さくすればUA値は改善する——けれどそれは冬の日射取得を捨てる設計でもあります。数字だけを追うと、こういう本末転倒が起きます。

C値(気密)は、国の基準に存在しません。現行の省エネ基準(平成28年国土交通省告示第266号)の外皮基準は、UA値・ηAC値・部位別の熱抵抗値・開口部U値だけで構成されており、気密性能の規定はありません。

世間で言われる「C値1.0以下」「0.5以下」に法的根拠はなく、実務者・工務店が自主的に置いている目標値です。国土交通省の設計ガイドも 気密性能の基準は定められていませんが、ひとつの目安として、HEAT20では、断熱のレベルにかかわらず目指すべき気密性能C値は0.7±0.2cm²/㎡ と、HEAT20の数値を借りる形で紹介しています。かつて平成11年(次世代省エネ)基準には気密住宅の規定があったとされますが、その削除の経緯を示す一次資料には到達できていません。

2025年4月から、省エネ基準適合が義務になりました

2025年4月1日以降に工事に着手する新築住宅は、すべて省エネ基準(=断熱等性能等級4のUA値+一次エネルギー消費量等級4/BEI≦1.0)への適合が義務になりました。仕様基準で評価する場合は省エネ適合性判定が不要です。

なお「2030年度までにZEH水準(等級5)が義務化される」という言い方をよく見かけますが、施行日の決まった法令としては確認できません。国土交通省のサイトにあるのは「建物の省エネ基準は遅くとも2030年までに大きく引き上げられ、より高性能な建物が求められます」という方針の記述までです。このページでは断定を避けます。

出典:国土交通省 報道発表資料、国土交通省「家選びの基準変わります」。一次エネルギー消費量等級は断熱等性能等級とは別系統で、等級4=BEI≦1.0、等級5=0.9、等級6=0.8。「断熱等級6」と「一次エネ等級6」は別物なので、住宅性能評価書を読むときは混同に注意してください。
材

断熱材を、λ で並べ直す

グラスウール、ウレタン、フェノール、セルロース、羊毛——素材の名前で語ると比べられません。国は断熱材を λ の値で A-1 から F までの7段階に区分しています。まずこの物差しに全部載せます。

断熱材の区分(A-1〜F)

区分熱伝導率 λ告示が例示する断熱材
A-10.052〜0.051ブローイング用グラスウール(吹込み)13K・18K、タタミボード15mm、A級インシュレーションボード9mm、シージングボード9mm
A-20.050〜0.046グラスウール10K(普通品)相当、吹込み用ロックウール25K
B0.045〜0.041グラスウール16K・20K(普通品)相当、EPS保温板4号、押出法ポリスチレンフォーム1種1号・1種2号
C0.040〜0.035グラスウール24K・32K(普通品)、高性能グラスウール16K・24K・32K、住宅用ロックウール、EPS1〜3号、XPS1種、吹付け硬質ウレタンフォームA種3、吹込み用セルローズファイバー25K・45K・55K
D0.034〜0.029高性能グラスウール40K・48K、EPS特号、XPS2種、硬質ウレタンフォーム保温板1種、吹付け硬質ウレタンフォームA種1・A種2、フェノールフォーム2種2号
E0.028〜0.023XPS3種、硬質ウレタンフォーム保温板2種1号〜4号、フェノールフォーム2種3号
F0.022 以下フェノールフォーム保温板1種1号・1種2号(ネオマフォーム等)
出典:国土交通省 別添2「断熱材区分」(住宅金融支援機構『フラット35対応 木造住宅工事仕様書』にも収載)。注意が必要なのは、告示の例示と実際の製品のλがずれることです。告示でF区分に例示されるのはフェノールフォームだけですが、アキレスのキューワンボード(λ0.021)や日本アクアのアクアフォームNEO(λ0.020)は数値上F域に入ります。カタログを読むときは、区分記号ではなく製品公表λで判断してください。

同じ熱抵抗に必要な厚み——基準は高性能グラスウール16K 100mm

高性能グラスウール16K(λ0.038)を 100mm 入れると、熱抵抗は R=0.100÷0.038=2.63。この同じ 2.63 を、他の断熱材なら何mmで出せるのか。

断熱材(代表商品)λ区分R2.63に必要な厚み高性能GW16K 100mm比
VIP-Build(真空断熱材)0.004区分外11 mm0.11倍
ネオマゼウス0.018F47 mm0.47倍
ネオマフォーム/アクアフォームNEO0.020F53 mm0.53倍
キューワンボード0.021F55 mm0.55倍
ミラフォームΛ/スタイロフォームFG0.022F58 mm0.58倍
カネライトスーパーE/スタイロEX/アキレスボード0.024E63 mm0.63倍
スタイロエース-Ⅱ/ミラフォームMKS0.028E74 mm0.74倍
高性能グラスウール36K/アクリアウールα0.032D84 mm0.84倍
アクアフォーム(100倍発泡)/サーモウールNEO0.033D87 mm0.87倍
EPS特号/スタイロフォームB20.034D89 mm0.89倍
太陽SUNR(パラマウント硝子・20K)0.035C92 mm0.92倍
高性能グラスウール24K/アクリアウール/ミラフォームM1F0.036C95 mm0.95倍
高性能グラスウール16K・14K(アクリアネクスト)/グラスウール24K(普通品)/ロックウール(ホームマット・アムマット)/シュタイコフレックス0380.038C100 mm1.00倍(基準)
セルロースファイバー(デコス)/XPS1種0.040C105 mm1.05倍
グラスウール20K(普通品)0.042B110 mm1.10倍
グラスウール16K(普通品)0.045B118 mm1.18倍
グラスウール10K(普通品)0.050A-2132 mm1.32倍
ブローイング用グラスウール(吹込み)13K・18K0.052A-1137 mm1.37倍
λ は各メーカーの公表値。厚みは R2.63 × λ × 1000 で当方が算出した値です。メーカー公式の表現としては、旭化成建材が「ネオマフォーム100mm = 高性能グラスウール断熱材190mm に相当」と公表しています(R5.0 ÷ 0.038 = 0.190m で整合)。「グラスウール16K(普通品)」と「高性能グラスウール16K」は、密度が同じ16Kでも λ が 0.045 と 0.038 で別物です。ここを取り違えると、同じ厚みで熱抵抗が18%変わります。

柱寸法という、動かせない上限

充填断熱は、柱の見付け寸法までしか入りません。105mm柱に高性能グラスウール16Kを充填したときの熱抵抗は R2.76。ここが在来軸組の物理的な天井です。

105mm柱 充填(高性能グラスウール16K)R 2.76
120mm柱 充填R 3.16
2×6(140mm)充填R 3.68
105mm充填+ネオマ45mm外張R 5.06
105mm充填にネオマフォーム45mm(R2.3)を外張りで足すだけで、2×6充填の1.4倍に届きます。等級6・7で付加断熱が現実解になるのは、柱を太くするより断熱材を外に足すほうが効くからです(ただし外張りの厚みには別の上限があります。工法の章を参照)。

製品カタログ

λ と厚み展開、そして防湿層が製品に付いているかどうか。カタログで最初に見るべきはこの3点です。防湿層なしの製品は、別張りの防湿シートと施工手間が必ず追加されます。

グラスウールには3つの顔があります

カタログで最初に混乱するのがここです。同じ「グラスウール」でも、普通品・高性能品・ブローイング用の3種類があり、性能も施工方法も別物です。

呼び方正式にはλ の範囲形と施工どこで使うか
グラスウール(普通品)
10K・16K・20K・24K
住宅用グラスウール断熱材(JIS A 9521)0.050〜0.038マット状。防湿フィルムの「耳」が付いた袋入りを、柱の間に手で押し込む壁・天井の充填。いちばん安い
高性能グラスウール
14K・16K・24K・36K
高性能グラスウール断熱材(同上)0.038〜0.032同じくマット状。繊維が細く密に作られている壁・天井の充填。いま新築でいちばん多い
ブローイング(吹込み)
13K・18K・30K・35K
吹込み用グラスウール断熱材(JIS A 9523)0.052〜0.038ふわふわの綿状。専用の機械でホースから吹き込む。マットのような板の形はしていない主に天井(小屋裏)。厚みを稼ぎやすく、配線まわりの隙間を埋められる
「吹込み用グラスウール」は、一般的なグラスウールとは別物です。袋に入ったマットではなく、綿を機械で吹き込む工法用の製品で、λ は施工密度で決まります。天井に13K・18Kの低密度で吹くと λ0.052(区分A-1)と性能は低いのですが、平らな小屋裏に厚く積めるのでトータルの熱抵抗は稼げる。逆に壁や屋根に使うときは30K・35Kの高密度で吹き込み、λ0.038(区分C)になります。同じ商品名でも、どこに何K で吹いたかで性能が変わる——これがブローイングの特徴です。
そして「16K」は密度(16kg/m³)であって性能ではありません。グラスウール16K(普通品)は λ0.045、高性能グラスウール16K は λ0.038。同じ16Kでも別物です。

グラスウールの主な商品

メーカー・商品密度λ厚み防湿層設計価格(材料のみ)
旭ファイバーグラス アクリアネクスト14K0.03889・105mm高性能防湿フィルム付(50μm)7,390〜8,180円/坪(約2,240〜2,470円/㎡)
旭ファイバーグラス アクリアネクストα20K・28K0.033〜0.03489・105・140mm防湿フィルム付12,240円/坪(約3,700円/㎡)
旭ファイバーグラス アクリアウール16〜24K0.036〜0.03850〜140mmなし(別張り防湿シート必須)4,300〜16,440円/坪
旭ファイバーグラス アクリアウールα20・28・36K0.032〜0.03489・105・120・140mmなし(別張り必須)7,790〜14,390円/坪
旭ファイバーグラス アクリアマット10〜16K0.037〜0.04350・100・155mm防湿フィルム付(18μm)2,450〜11,350円/坪
旭ファイバーグラス アクリアUボードピンレス24K0.03690・105・120mm—(床・剛床用)10,320〜13,860円/坪
旭ファイバーグラス アクリアジオス32K0.03545mm(外張り用)—8,690円/坪(約2,630円/㎡)
マグ・イゾベール イゾベール・コンフォート10.0〜36.0kg/m³0.033/0.035/0.038105mm ほかなし(別途防湿層の施工が必要)確認できず
マグ・イゾベール イゾベール・スタンダード同上0.032〜0.038確認できず防湿層付き確認できず
パラマウント硝子工業 太陽SUNR(SRJ)20kg/m³0.03589・105・120・140・200mm—確認できず
太陽SUNR は JIS A 9521適合、不燃材料の認定(NM-5172/200mm厚はNM-5986(2))を持つ圧縮包装品で、熱抵抗は 89mm:2.5/105mm:3.0/120mm:3.4/140mm:4.0。㎡換算は当方が 1坪=3.3058㎡ で除した参考値です。メーカー設計価格は掛率前の定価なので、実際の見積り(実行価格)とは別物として読んでください。日本板硝子ブランドの住宅用グラスウールは現行製品を確認できませんでした。グラスウールの主要メーカーは旭ファイバーグラス/マグ・イゾベール/パラマウント硝子工業の3社構成です。出典:旭ファイバーグラス、マグ・イゾベール、パラマウント硝子工業。

ロックウール・セルロースファイバー

メーカー・商品密度λ厚み備考
ニチアス ホームマット30kg/m³以上0.038以下55・75・90・100・140・155mm不燃材料 NM-4203、F☆☆☆☆
ニチアス ホームマットNEO30kg/m³以上0.038以下90・105mm高気密高断熱住宅向け
ニチアス ホームブローウール(吹込み)25以上(天井)/60以上(壁床)0.047以下(天井)/0.038以下(壁等)天井190〜600mm/屋根床壁90〜400mmJIS A 9523、告示1400号 不燃材料
JFEロックファイバー アムマット30kg/m³以上0.03840〜105mm防湿フィルム18μm貼り、耳幅約30mm
デコス デコスファイバー(デコスドライ工法)施工目標55kg/m³以上0.040乾式吹込みJIS A 9523、新聞紙リサイクル、調湿・吸音、防火構造認定あり
ロックウールはシロアリに食べられず、不燃であることが最大の売りです。よく見かける「日本ロックウールのホームマット」という表記は誤りで、ホームマットはニチアスの商品です。デコスの施工密度は公式サイトに数値の明記がなく、「施工目標55kg/m³以上」は施工業者側の情報です。セルロースの材料単価は出典によって 1,500円/㎡(50mm厚換算)と 6,000〜9,000円/㎡ と桁が違うため、このページではどちらか一方を断定しません。出典:ニチアス 住宅用断熱材カタログ、デコス。

フェノールフォーム・ウレタンボード・XPS

メーカー・商品λ区分JIS区分厚み
旭化成建材 ネオマゼウス0.018Fフェノールフォーム1種2号EⅡ確認できず(R2.5=45mm の記載あり)
旭化成建材 ネオマフォーム0.020以下Fフェノールフォーム1種2号CⅡ/密度27kg/m³以上25・30・35・40・45・50・60・66・80・90・95・100mm
アキレス キューワンボード0.021以下F相当硬質ウレタンフォーム2種2号DⅠ/密度32kg/m³25・30・36・40・45・50・61mm(MAは貼合せで最大100mm)
JSP ミラフォームΛ(ラムダ)0.022以下FXPS 3種aD/密度25kg/m³以上確認できず
デュポン・スタイロ スタイロフォームFG0.022FXPS 3種bD確認できず
カネカ カネライトフォーム スーパーE0.024EXPS 3種b/密度25kg/m³以上20〜100mm(910×1,820)
デュポン・スタイロ スタイロフォームEX0.024EXPS 3種bC確認できず
アキレスボード(PE/ALN/AG)0.024以下E硬質ウレタンフォーム2種2号AⅠ相当/密度25kg/m³以上10〜100mm
デュポン・スタイロ スタイロエース-Ⅱ/スタイロフォームAT0.028EXPS 3種bA確認できず
JSP ミラフォームMKS0.028以下EXPS 3種bA/密度25kg/m³以上確認できず
デュポン・スタイロ スタイロフォームB20.034DXPS 2種bA確認できず
デュポン・スタイロ スタイロフォームIB/JSP ミラフォームM1F0.036CXPS 1種bC/密度20kg/m³以上確認できず
スタイロフォームの厚み展開・密度は、公式の「標準サイズ・物性」ページに到達できず確認できていません。EPS(ビーズ法)は号数別のλ確定値を一次資料で確認できなかったため、区分での表記にとどめます(特号=D、1〜3号=C、4号=B)。出典:旭化成建材 ネオマフォーム、アキレス キューワンボード、押出発泡ポリスチレン工業会、カネカ カネライトフォーム スーパーE。

ネオマフォームの厚み別 設計価格(材料のみ・910×1,820)

厚さ熱抵抗 R1枚価格㎡換算厚さ熱抵抗 R1枚価格㎡換算
25mm1.34,400円約2,660円60mm3.08,130円約4,910円
30mm1.54,900円約2,960円66mm3.38,690円約5,250円
35mm1.85,400円約3,270円80mm4.011,840円約7,150円
40mm2.05,920円約3,580円90mm4.513,400円約8,090円
45mm2.36,580円約3,970円95mm4.8——
50mm2.57,110円約4,290円100mm5.014,220円約8,590円
出典:旭化成建材 ネオマフォーム設計価格表。㎡換算は 1枚=1.6562㎡ で当方が計算。付加断熱でよく使われる45mm厚が、㎡あたり約3,970円(設計価格)です。設計価格は掛率前の定価であり、実際の仕入れ価格ではありません。

現場発泡ウレタン ——「100倍」と「30倍」は別の材料です

商品(日本アクア)JIS A 9526 区分λ密度透湿性防湿層
アクアフォームA種3(100倍発泡・低密度)0.03314 kg/m³15.0 ng/(m·s·Pa)省エネ基準上、室内側防湿層が原則必要
アクアフォームNEOA種1H(30倍発泡・高密度)0.02035 kg/m³1.5 ng/(m·s·Pa)不要(透湿抵抗が大きく設置を求められない)
アクアフォームLITEA種30.036確認できず確認できず確認できず

透湿性が10倍違う。これが「防湿層が要るか要らないか」の分かれ目です。同じ「吹き付けウレタン」でも、100倍発泡(A種3)と30倍発泡(A種1H)はλで1.65倍、密度で2.5倍、透湿性で10倍の差があります。

材料単価だけ見れば30倍発泡は高い。けれど防湿シート代・気密テープ代・張る手間がまるごと消えるので、外皮全体のコストで比べないと判断を誤ります。逆に100倍発泡を選んで防湿層を省略した施工は、そのまま壁体内結露のリスクになります。

JIS A 9526 の A種3 は λ 0.040以下・密度 7〜25kg/m³未満と規格の幅が広く、現場発泡は吹付け厚みと密度の管理が性能を直接左右します。自己接着性が高く気密が取りやすい(別張り気密シートを省ける)のは A種1H の特性です。フォームライトSL(BASF INOACポリウレタン)、アイシネン、WALLTITE については、公式カタログPDFからλ・密度を抽出できず確認できていません。出典:日本アクア 比較データ、アクアフォームNEO。

木質繊維・羊毛・炭化コルク・真空断熱材

商品λ密度特徴価格(材料のみ)
シュタイコフレックス038(STEICO・木繊維)0.03850 kg/m³比熱 2,100 J/(kg·K)=グラスウール(約840)の約2.5倍確認できず
サーモウール スタンダードF(羊毛60%)0.03827 kg/m³105mm厚1,200〜3,600円/㎡(羊毛の相場)
サーモウールNEO0.03341 kg/m³105mm厚同上
炭化コルク(ポルハコルク・ジャパン)0.037(実測)/0.040(申告)110〜120 kg/m³接着剤不使用(バインダーはコルク自身の樹脂)、ホルムアルデヒド不含・吸着、ダニ忌避50mm厚 2,334円/枚(約4,180円/㎡)
VIP-Build(旭ファイバーグラス・真空断熱材)0.004—16mm厚でR4.0=ネオマフォーム80mm相当。2022年7月に建築用真空断熱材として国内初のJIS認証(JIS A 9529)8,040円/枚(約23,900円/㎡)
木繊維断熱材はλが0.038でグラスウールと同じなのに、比熱が2.5倍という材料です。熱容量が大きいぶん温度変化が遅れて伝わる(位相遅れ)ため、夏の屋根面のように「昼のピークをずらしたい」部位で効きます。λだけを見ると差が出ない性質なので、カタログ比較では埋もれがちです。
真空断熱材の λ を「0.002程度」と書いた記事を見かけますが、VIP-Build の公表値は 0.004 です。新築の壁面全体に使った事例は確認できず、実務上はリフォーム用断熱ボードへの内蔵や、内窓・内張り断熱での採用が中心です。出典:STEICO 技術資料、コスモプロジェクト サーモウール、ポルハコルク・ジャパン、新建ハウジング(VIP-Build)。

25年後の λ で比べる

カタログに載るのは初期の λ です。発泡プラスチック系は発泡ガスが経年で抜け、λ が上がっていきます。旭化成建材はネオマフォームについて25年後の推定平均 λ=0.02047(初期0.020)を公表しています。100ミクロン未満の微細気泡構造とノンフロン(炭化水素ガス)発泡によるもので、25年でほぼ動かない。

アキレスもキューワンボードの訴求に「経時断熱性能に優れた」という表現を使っています。裏を返せば、ウレタン・PIR系は経時でλが低下しうることを業界自身が前提にしているということです。初期λが同じでも、30年住む家の性能は同じではありません。

各断熱材の弱点と、実際に起きた事故

GLASS WOOLグラスウールの脱落

  • メーカー(マグ・イゾベール)公式FAQは「通常の施工をした状態で外的要因がなければずり落ちない」としつつ、防湿施工の不備から壁体内結露が発生し、断熱材内に大量の水がたまって断熱材が脱落する事例が過去に報告されていると明記しています。
  • 対策としてメーカーが挙げるのは①適切な防湿処理、②通気層工法の採用の2点。
  • つまりグラスウールが悪いのではなく、防湿層と通気層の欠落が事故要因だというのがメーカー側の一次主張です。

SPRAY FOAM現場発泡ウレタンの剥離

  • 基礎断熱で現場発泡ウレタンがコンクリートから剥離し、床下に大量のカビが発生した事例が業界誌で報じられています(記事本文は取得制限があり、詳細は未確認です)。
  • A種3は透湿性 15.0 ng/(m·s·Pa)。防湿層を省いた施工はそのまま結露リスクになります。
  • 吹付け厚不足に関する定量的な事故統計は確認できませんでした。

XPS / FOAM発泡プラスチック系のシロアリ

  • 日本しろあり対策協会が2017年に会員715社へ実施した調査では、基礎断熱住宅のシロアリ被害の到達範囲が基礎断熱材のみ14.2%/土台まで24.1%/1階柱などの構造材まで47.5%/2階以上まで拡大14.2%。6割超が構造体に波及しています。
  • 名指しされているのは押出法ポリスチレンフォーム。「シロアリはこの断熱材を食料としているわけではないが、簡単に破砕して内部を通過できる」柔らかさが問題とされています。
  • 無機系(ロックウール・グラスウール)は食害されません。

CELLULOSEセルロースファイバーの沈下

  • 沈下の2大要因は①弾力性(地震・強風・生活振動の繰り返しによる徐々の沈下)、②重量(グラスファイバー比で約3倍重い)。
  • 対策は施工密度55kg/m³以上の高密度充填と、部位ごとの充填確認。
  • デコス公式も「施工密度や充填状態によって実際の性能が左右される」と明記しています。告示の施工密度区分は25K・45K・55Kで、25Kは天井、壁は55Kという使い分けになります。
出典:マグ・イゾベール FAQ、日経ホームビルダー「広がる基礎断熱材の被害」、デコス、西日本エコ断熱(沈下の理由)。
風

同じ6地域。同じ等級6。まったく違う家。

地域区分は「外気温傾向」で8つに分けられたものです。分けられていないものが、日照・湿度・積雪・風。同じ区分の中でも、冬の条件はまったく違います。ここからが、断熱材マニアの本題です。

UA値の出典は国土交通省、HEAT20の水準は HEAT20。室温はHEAT20の試算(冬期の最低体感温度・3%タイル値)であって、国の基準ではありません。地域区分は平成28年国土交通省告示第265号 別表第10(令和元年11月 同告示第783号による改正後、2021年4月1日から完全適用)に基づきます。

47都道府県、そのすべてが「県内で分かれている」わけではない

地域区分は市町村単位で決められています。県内で複数の区分にまたがるのが普通で、単一区分に収まっているのは富山県(5地域)・香川県(6地域)・佐賀県(6地域)・沖縄県(8地域)の4県だけです。

逆に最も分かれているのは東京都・栃木県・群馬県の3都県で、それぞれ5つの区分を抱えています。

都道府県県庁所在地所在地の区分県内に存在する区分県内の落差
北海道札幌市21・2・31=夕張・士別・名寄・占冠・幌加内などの内陸寒冷地/3=函館・室蘭・松前などの道南
青森県青森市32・3・42=平川市(旧碇ヶ関村)/4=鰺ヶ沢町・深浦町
岩手県盛岡市32・3・42=葛巻町・岩手町・西和賀町など/4=宮古・大船渡・北上・一関
宮城県仙台市53・4・55は仙台市・多賀城市・山元町の3市町だけ。県内の大半は4地域
秋田県秋田市42・3・4・52=小坂町/5=にかほ市
山形県山形市43・4・55=酒田市(旧酒田市)/3=新庄・長井・尾花沢・南陽
福島県福島市52・3・4・52=檜枝岐村・南会津町の一部/5=福島・郡山・いわき・浜通り
茨城県水戸市54・5・64=城里町(旧七会村)・大子町/6=日立・古河・鹿嶋・神栖・守谷
栃木県宇都宮市52・3・4・5・62=日光市(旧栗山村)/6=足利市・佐野市。県内で5区分
群馬県前橋市62・3・4・5・62=嬬恋村・草津町・片品村/6=高崎・太田・館林。県内で5区分
埼玉県さいたま市64・5・64=秩父市(旧大滝村)/6=県東部・南部の平野部
千葉県千葉市65・6・75=印西・富里・栄町・神崎町/7=館山市・勝浦市
東京都東京23区64・5・6・7・84=檜原村・奥多摩町/7=伊豆諸島/8=小笠原村。八王子市は6。都内で5区分
神奈川県横浜市65・6・75=山北町・愛川町・清川村/7=横須賀・藤沢・三浦
新潟県新潟市54・54=小千谷・十日町・魚沼・南魚沼・湯沢・津南などの豪雪地
富山県富山市55 のみ県内全域が5地域。単一区分
石川県金沢市63・4・5・63=白山市(旧白峰村)/6=金沢・小松・野々市
福井県福井市64・5・64=池田町/5=大野・勝山・あわら・坂井
山梨県甲府市63・4・5・6甲府市自体が3区分に分かれる:旧上九一色村=4/旧中道町=5/旧甲府市=6。3=忍野村・山中湖村・鳴沢村
長野県長野市42・3・4・52=軽井沢町・川上村・南牧村・木祖村など/5=飯田市・喬木村。松本市は4
岐阜県岐阜市63・4・5・63=飛騨市・白川村・郡上市(旧高鷲村)/高山市は4
静岡県静岡市75・6・75=御殿場市・小山町・川根本町。浜松市は6で、静岡市より寒冷側
愛知県名古屋市64・5・6・74=豊根村・豊田市(旧稲武町)/7=豊橋市
三重県津市65・6・7津市が2区分に分かれる:旧美杉村=5/その他=6。7=熊野市・御浜町・紀宝町
滋賀県大津市55・66=近江八幡市・草津市・守山市の3市のみ
京都府京都市65・65=福知山・綾部・宮津・亀岡・京丹後などの内陸北部
大阪府大阪市65・6・75=豊能町・能勢町/7=岬町
兵庫県神戸市64・5・64=香美町(旧村岡町・旧美方町)/5=豊岡・丹波篠山・養父・宍粟
奈良県奈良市63・4・5・6奈良市が2区分に分かれる:旧都祁村=4/その他=6。3=野迫川村
和歌山県和歌山市74・5・6・74=高野町/7=和歌山市・新宮・白浜などの沿岸
鳥取県鳥取市64・5・64=若桜町・日南町・日野町
島根県松江市64・5・64=飯南町・吉賀町
岡山県岡山市64・5・64=新庄村・西粟倉村・吉備中央町・真庭市の一部
広島県広島市63・4・5・63=廿日市市(旧吉和村)/4=庄原市の一部・安芸太田町・神石高原町
山口県山口市65・6・77=下関市(旧豊田町を除く)/5=美祢市・萩市の一部
徳島県徳島市65・6・75=三好市・上勝町/7=小松島・阿南・美波・海陽
香川県高松市66 のみ県内全域が6地域。単一区分
愛媛県松山市74・5・6・74=久万高原町・新居浜市(旧別子山村)/今治・西条などは6
高知県高知市74・5・6・74=いの町(旧本川村)・梼原町
福岡県福岡市75・6・75=東峰村/北九州市は6で、福岡市より寒冷側
佐賀県佐賀市66 のみ県内全域が6地域。単一区分
長崎県長崎市76・76=佐世保・松浦・対馬・東彼杵などの北部
熊本県熊本市75・6・75=阿蘇市・高森町・南阿蘇村・小国町などの阿蘇地域
大分県大分市75・6・7大分市が2区分に分かれる:旧野津原町=6/その他=7。5=九重町・玖珠町
宮崎県宮崎市75・6・75=椎葉村・五ヶ瀬町/6=小林・えびの・高千穂
鹿児島県鹿児島市76・7・86=伊佐市・湧水町/8=奄美群島全域(奄美市・徳之島・与論など)
沖縄県那覇市88 のみ県内全域が8地域。単一区分
出典:省エネルギー基準/地域区分表[令和2年7月版](平成28年国土交通省告示第265号 別表第10、令和元年11月 同告示第783号による改正後)。LIXIL『2025年版 省エネルギー基準地域区分表』およびマグ・イゾベールと突き合わせ、同じ告示を引用していることを確認しています。国土交通省の「地域区分新旧表」PDFは新旧が左右2段組になっており、機械的な読み取りでは列の対応が安定しなかったため、本ページでは採用していません。市町村名の表記は正式名称をご確認ください。

古い資料の区分を、そのまま使っていませんか。地域区分は令和元年11月の国土交通省告示第783号で改正され、経過措置を経て2021年4月1日から新区分が完全適用されています。この改正で、多くの市町村がより温暖側へ1つシフトしました。

たとえば仙台市は4→5、福島市は4→5、福岡市は6→7、旭川市は1→2、八王子市・立川市は5→6。ところが「1=旭川、2=札幌、3=盛岡、4=仙台、5=宇都宮…」という改正前の代表都市リストが、いまも資料やスライドに残って流通しています。これが混乱のいちばんの発生源です。

ネットでよく見かける「仙台=4地域」「福岡=6地域」「福島=4地域」は、いずれも改正前の値です。古い区分で設計すると、1ランク厳しい(または緩い)基準で計算してしまうことになります。なお新潟市は改正の前後を通じて一貫して5地域で、「6地域」とする記載は誤りです。

同じ6地域の中で、1月の日照時間が3.4倍違う

下の14都市は、すべて6地域です。同じ区分、同じ等級6なら求められるUA値も同じ 0.46。それでも冬の条件はこれだけ違います。

都市(すべて6地域)年平均気温1月 日平均1月 日最低1月 日照1月 降水量1月 湿度年 降雪合計8月 日平均
甲府15.1℃3.1℃−2.1℃209.1 h42.7 mm55%23 cm27.1℃
横浜16.2℃6.1℃2.7℃192.7 h64.7 mm53%9 cm27.0℃
東京23区15.8℃5.4℃1.2℃192.6 h59.7 mm51%8 cm26.9℃
名古屋16.2℃4.8℃1.1℃174.5 h50.8 mm64%12 cm28.2℃
岐阜16.2℃4.6℃0.7℃161.3 h65.9 mm66%34 cm28.3℃
大阪17.1℃6.2℃3.0℃146.5 h47.0 mm61%1 cm29.0℃
神戸17.0℃6.2℃3.1℃145.8 h38.4 mm62%1 cm28.6℃
高松16.7℃5.9℃2.1℃141.4 h39.4 mm63%1 cm28.6℃
広島16.5℃5.4℃2.0℃138.6 h46.2 mm66%8 cm28.5℃
京都16.2℃4.8℃1.5℃123.5 h53.3 mm67%15 cm28.5℃
鳥取15.2℃4.2℃1.1℃69.0 h201.2 mm76%140 cm27.3℃
松江15.2℃4.6℃1.5℃67.4 h153.3 mm76%68 cm27.1℃
福井14.8℃3.2℃0.5℃65.4 h284.9 mm82%186 cm27.4℃
金沢15.0℃4.0℃+1.2℃62.3 h256.0 mm74%157 cm27.3℃

1月の日照時間(すべて6地域)

読み方は4つあります。

① 1月の日照時間は、甲府209.1時間に対して金沢62.3時間。3.4倍の差。しかも年平均気温は甲府15.1℃、金沢15.0℃でほぼ同じです。太平洋側・内陸では冬の日射取得(南面の大きな開口+高日射取得型Low-E)が暖房戦略として成立しますが、日本海側では日射がほぼ当てにできません。日本海側は「取得」ではなく「損失を減らす」——UA値・気密・熱橋処理に投資すべき地域です。同じ6地域・同じ等級6でも、設計の中身は逆になります。

② 甲府の1月の日最低気温は−2.1℃、金沢は+1.2℃。年平均気温はほぼ同じなのに、甲府のほうが朝は3℃以上寒い。内陸で晴れるから放射冷却で冷え込み、日本海側は雲と海が保温している。「寒い=北」ではなく「晴れる内陸ほど朝が冷える」のです。非暖房室の朝の温度を問題にするなら、見るべきは年平均気温ではなく日最低気温です。

③ 1月の相対湿度は福井82%・鳥取76%・松江76%・金沢74%に対し、東京51%・横浜53%・甲府55%。日本海側では壁体内結露と外皮の乾燥性能(透湿抵抗比・通気層)の重要度が段違いに上がります。太平洋側はむしろ冬の過乾燥への対策側。

④ 8月の日平均気温は14都市とも26.9〜29.0℃で、ほとんど差がつきません。夏の暑さは地域区分でも地理でもあまり差がつかず、差がつくのは冬です。1〜4地域にηAC基準が設定されていないのも、これと整合します。

出典:気象庁 過去の気象データ検索(平年値・統計期間1991〜2020年)甲府/横浜/東京/名古屋/岐阜/大阪/神戸/高松/広島/京都/鳥取/松江/福井/金沢。甲府市は市内が3つの区分に分かれており、気象庁の観測地点がある旧甲府市域が6地域です。降雪の深さ合計は各地点で観測された平年値をそのまま転記しています。

国自身が「低日射地域」を制度として定めています

省エネ基準には、気温にもとづく地域区分(1〜8地域)とは別に、年間の日射地域区分(A1〜A5)と暖房期の日射地域区分(H1〜H5)が独立して定められています。そして住宅金融支援機構は「低日射地域とは、年間の日射地域区分において、その区分がA1またはA2となる地域」と定義しています。

さらに2026年度の補助事業「みらいエコ住宅2026事業」のGX志向型住宅では、再生可能エネルギーを含む一次エネルギー削減率の要件が、一般地域100%以上に対して寒冷地・低日射地域は75%以上に緩和されています。多雪地域・都市部狭小地等は要件なし。

つまり国は、「同じUA値でも日射条件が違えば必要なエネルギーは違う」と制度で認めている。断熱等級という一本の物差しの外側に、日射という別の物差しを国が用意しているわけです。日本海側(北陸・山陰・東北日本海側)で家を建てるなら、等級の数字だけを見ていては届かない領域があります。

出典:フラット35 FAQ(低日射地域の定義)、みらいエコ住宅2026事業(新築の省エネ要件)、建築研究所「日射に関する地域区分と日射量等」。日射地域区分の定義値と都市別の日射量一覧は、今回一次資料から数値を取得できていません。

HEAT20自身が「公表UA値は参考値」と書いている

HEAT20のサイトには、代表都市以外での外皮平均熱貫流率UA値は、別途地域補正する必要があり、公表している数値はあくまで参考として示しているに過ぎないと明記されています。HEAT20は「外皮性能水準地域補正ツール」も提供しています。

G2=UA0.46 という数字を掲げている当のHEAT20が、その数字は代表都市のものだと断っている。ここは見落とされがちです。

国土交通省の設計ガイドが求めているもの

令和7年3月の「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」(国土交通省住宅局 編集協力)には、UA値以外のことがずらりと書かれています。

論点ガイドの記述
室温UA0.46(等級6)で暖房期の最低室温が概ね13℃を下回らない、UA0.26(等級7)で概ね15℃を下回らない
気密気密性能の基準は定められていないが、目安としてHEAT20のC値 0.7±0.2cm²/㎡。気密の目的は①漏気による熱損失抑制、②計画換気の明確化、③壁体内への湿気流入抑止
日射取得・遮蔽地域別・方位別の開口部のガラスの種類・大きさ・配置による日射調整。等級7の場合、温暖地や寒冷地の南面は、冬期のオーバーヒートを考慮して日射遮蔽型とすることも考えられる
季節の考え方夏期は初夏から9月頃までを含めて日射しをしっかり遮る。冬期は寒さが残る3月頃までの日射しを室内に取り入れられる計画
通風・換気中間期における通風・換気による排熱。地窓と高窓を組み合わせ上下温度差を利用した通風
夏型結露夏の蒸し暑い日中、室外からの水蒸気の侵入によって、冷房で冷やされた内装下地に結露が発生するおそれ。冷房設定温度を低くしすぎないよう居住者に伝える、調湿断熱材を用いる方法もある
東西面東西面はやや小さめの開口部を設け、夏期の日射取得を小さくして冷房負荷の増大を抑制。軒・庇の先端にはすだれやスクリーンを掛けられるよう工夫
出典:国土交通省住宅局 編集協力「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」(令和7年3月)。国のガイド自身が、UA値だけでなく日射・気密・通風・湿度まで設計せよと求めているという事実が、このページで一番強い根拠です。

専門家の言葉で締めるなら。松尾設計室の松尾和也氏は、日本の住宅が「”数字の勝負”に寄りすぎている」と指摘しています。本来追うべきは暖房負荷・冷房負荷こそが本丸だが、国の共通基準になっておらず計算も複雑なため、見栄えの分かりやすいUA値・C値だけが独り歩きしている。冬季の日射取得と夏季の遮蔽が図面に落とし込まれていなければ、UA値が良くても実態としての負荷は下がらない——窓を小さくしてUA値だけコントロールするのは「近視眼的」である、と。

等級6は取るべきです。補助金のスタートラインでもあります。けれど等級6は、その土地の冬がどう寒いのかを読んだ設計の、入口にすぎない。

出典:モリシタ・アット・ホーム 松尾和也氏インタビュー(二次情報)。
工

どこに断熱材を置くか、で家が変わる

断熱材の種類を決めても、設計はまだ半分です。基礎か床か。天井か屋根か。柱の間か、外側か。それぞれに、性能・湿気・シロアリ・コストの取引があります。

基礎断熱 と 床断熱

違いは一点だけ。床下を室内側と考えるか、屋外側と考えるかです。この一点から、床下換気孔の有無、気密の取りやすさ、シロアリのリスク、湿気の出方まで全部が枝分かれします。

床下 = 室内側 床下換気孔は設けない 熱的境界(青い破線) 基礎の外側に断熱材 蟻道は断熱材の裏を上がる 屋外 1階の床

FOUNDATION基礎断熱

  • 気密が取りやすい。基礎と土台の気密パッキンだけで済み、実務ではC値0.5cm²/㎡程度が現実的な水準とされます。気流止めも不要。
  • 床下エアコンが使える。国土交通省の設計ガイドは「床下エアコンを設置する場合は、床下空間を熱源として利用するため、基礎断熱とすることが必須」と明記しています。
  • 基礎躯体の熱容量を利用できる(基礎外断熱の場合)。
  • 竣工初年度の湿気。日本建築学会技術報告集の論文は「温暖湿潤地域での採用拡大を想定した場合、竣工初年度に床下空間の熱水分環境が悪化し、結露と加熱負荷の増加が生じる」と報告しています。実務側では基礎スラブからの初年度の水分放出量を約1トンと見積もる例もあります。
  • シロアリ。特に基礎外断熱は、断熱材と仕上げ材の間の蟻道が外から目視で発見しにくくなります。
  • 本州での採用率は20〜25%程度(松尾設計室・松尾和也氏)。
床下 = 屋外側 床下換気孔が必要 熱的境界(青い破線)は床の位置 断熱材 外気 外気 夏は外気由来で床下が高湿になる

FLOOR床断熱

  • コストが安い。断熱範囲が小さく、特別な納まりも要りません。
  • シロアリの侵入経路が、床下点検で目視できる位置にある。
  • 気密の弱点が多い。根太・大引の隙間、配管貫通部が多数あり、C値1.0cm²/㎡以下はハードルが高いとされます。壁と床の取合いには気流止めが必須で、これを欠くと「外壁や屋根を十分に断熱しても、取り合い部から床下の冷気が壁の内部に入り込み、断熱性能の低下と内部結露を引き起こす」(横浜市 技術講習資料)。
  • 夏の床下が高湿になる。日本建築学会環境系論文集の実態調査では、対象住宅の床下の夏季平均相対湿度は80%以上。室内空気を床下へ供給する手法で、相対湿度80%以上の累積率を50%以下に抑えられ、暖房負荷の増加は最大約10%と報告されています。
  • ユニットバス下が定番の弱点。浴室部分だけ部分的に基礎断熱にする必要があり、床断熱との連結不良が起きやすい。「ユニットバスの搬入前に断熱・気密を済ませることが大切」(硝子繊維協会)。玄関土間も同じ構図です。
  • 床下エアコンは使えません。
どちらも湿気の問題を抱えていますが、時期と原因が違います。基礎断熱は竣工初年度のコンクリート水分、床断熱は毎年夏の外気由来の高湿。学会論文2本がそれぞれ裏づけています。出典:香西ほか「竣工初年度における基礎断熱床下空間に関する熱水分同時移動解析」日本建築学会技術報告集16(33)、佐藤・中島「床断熱工法住宅の床下温湿度環境の実態調査」日本建築学会環境系論文集83(753)、国土交通省 設計ガイド、硝子繊維協会 充填断熱施工マニュアル。

基礎断熱の3方式と、シロアリという現実

方式施工特徴と注意点
基礎外断熱型枠と同時打込みを標準/基礎最下部〜天端まで熱橋が最も少なく基礎躯体の熱容量を活かせる。一方で蟻道が断熱材と仕上材の間に隠れ、外から目視発見できない。紫外線劣化対策として脱型後速やかに外装仕上げが必要
基礎内断熱同時打込みまたは後貼り蟻道が室内側で目視可能。ただしアンカーボルト・ホールダウン金物が熱橋となり結露の可能性。底盤部・間仕切り部にも立上りと同厚の断熱材を900mm程度折り返して熱橋対策
基礎両側断熱外+内の併用最も熱損失が小さいが、外側の蟻害リスクは外断熱と同じ。両側断熱についての独立した公的規定・性能データは確認できず

「防蟻断熱材を使えばシロアリは入らない」は誤りです。デュポン・スタイロのスタイロフォームAT(防蟻用XPS)の施工要領書には、防蟻効果の確認がイエシロアリ・ヤマトシロアリに対してであること、そして忌避効果はありませんと明記されています。だから目地は別途処理が必要で、土壌処理・ベイトシステムの併用が推奨されています。新築の外側断熱は同時打込み工法とすることという指定もあります。

シロアリの種分布設計上の意味
ヤマトシロアリ北海道北部を除く日本全国実質的に全国が対象。北海道でも防蟻対策の標準化が必要という報告がある
イエシロアリ神奈川県・千葉県の一部以西の温暖な海岸沿い、南西諸島、小笠原諸島に点在この生息域では基礎外断熱は慎重に。防蟻断熱材+土壌処理+ベイトの多重防御か、基礎内断熱を検討
アメリカカンザイシロアリ外来種。1976年に東京都江戸川区で国内初確認、現在は全国に散在的に分布蟻道を作らず乾材の中で一生を過ごすため、床下点検では発見できない。0.7〜1mm弱の俵状の糞が手がかり
ダイコクシロアリ奄美大島以南—
日本には22種のシロアリが生息しますが、建築物に重大な被害を与えるのは上記4種です。基礎外断熱の蟻害の「被害率(%)」を示す統計は確認できませんでした(前章の715社調査は、被害が起きた場合の到達範囲を示すものです)。出典:公益社団法人 日本しろあり対策協会、デュポン・スタイロ スタイロフォームAT 基礎断熱設計・施工要領書、押出発泡ポリスチレン工業会。

フラット35が基礎断熱に求めていること

項目規定
床下換気孔基礎断熱工法とする場合は設置しない。FAQでも「設置してはいけません」と明言
断熱材の熱抵抗値1・2地域 1.2 ㎡·K/W以上/3〜7地域 0.6以上/8地域 規定なし
床下防湿措置①防湿フィルム0.1mm以上を敷き詰め、重ね幅300mm以上、厚さ50mm以上のコンクリート等で押さえる、または②厚さ100mm以上のコンクリート打設
防蟻措置べた基礎で覆う、または基礎と鉄筋により一体化したコンクリートで覆う(北海道等の指定県では省略可)
基礎の高さ地面から基礎上端または土台下端まで40cm以上
防腐・防蟻地面から高さ1m以内の部分について、耐久性区分D1樹種/薬剤処理材/真壁造+軒出90cm以上/通気層構造/小径12cm以上の製材、のいずれか
「断熱材を地面から下方◯mmまで施工せよ」という深さの明文規定は、フラット35の仕様書・耐久性基準のいずれにも存在しません。規定されているのは熱抵抗値・防湿・防蟻であって、深さではありません。ネットで見かける「◯mm以上」という数字には根拠を確認してください。また、国土交通省が公開する住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準に、床下換気孔面積・基礎断熱・防湿層・防蟻の条文は含まれていません(基礎関連は「立上り部分の高さは地上部分で300mm以上」のみ)。出典:フラット35 耐久性基準、同FAQ。

天井断熱 と 屋根断熱 と 桁上断熱

小屋裏=屋外側 断熱材 R4.4(誘導基準) 吹込みで厚みを稼ぎやすい

CEILING天井断熱

  • 断熱範囲が小さく、安い。吹込み工法で厚みを稼ぎやすい。
  • 誘導基準の必要熱抵抗は4.4(4〜7地域・充填)で、屋根断熱の5.7より緩い。
  • 小屋裏換気が必須。両妻壁で給排気なら天井面積の1/300以上、軒裏で給排気なら1/250以上、軒裏給気+棟排気なら給気1/900以上+排気1/1,600以上。
  • 断熱欠損が起きやすい3か所——ダウンライト、天井点検口、間仕切り壁の上部。間仕切り壁上部は「野縁を組むラインに気流止めとして乾燥木材を留め付け、その上に断熱材を施工する」(横浜市)。
  • ロフト・小屋裏収納・勾配天井は作れません。
断熱材 R5.7 小屋裏=室内側/勾配天井が作れる 通気層は30mm以上 実測では通気層出口が65.7℃に達した例も

ROOF屋根断熱

  • 小屋裏を室内として使える。勾配天井・ロフトが成立する。
  • 屋根面で気密層を連続させやすい。小屋裏換気は不要(代わりに通気層)。
  • 要求が厳しい。誘導基準でR5.7。天井断熱の約1.3倍。断熱範囲も広くコストが上がる。
  • 厚みが垂木せいに縛られる。通気層は屋根で30mm以上(外壁は15mm以上)必要で、垂木の中を通気層と断熱材で分け合うことになる。
  • 熱がこもる。岩手県北上市での実測では、通気層30mm・通気層長さ約8mの屋根で、軒先の外気温34℃のとき通気層出口が65.7℃。この熱に対しては屋根・天井の断熱材厚さ150mm程度以上が必要で「断熱材の厚さが最も重要な要素」と報告されています。
断熱材 桁の上に構造用合板を張り、その上に敷く 気密層が平面で連続する 天井裏の配線・配管が気密層を貫かない

ON-BEAM桁上断熱

  • 桁(軒桁・小屋梁)の上に構造用合板等を張り、その上に断熱材を敷く。気密層が桁上で平面的に連続するため、気密が取りやすい。
  • 平坦な面に敷けるので厚みを確保しやすい。ダウンライトや配線が気密層を貫かない。
  • 公的な位置づけがない。フラット35仕様書・告示・公的ガイドに桁上断熱の独立した規定は確認できませんでした。省エネ計算上は「天井断熱」として扱われるのが一般的ですが、これも一次資料の裏づけはありません。
  • 「第三の選択肢として実務で広がっている工法」という理解が実態に近いところです。
通気層の厚さ(外壁15mm以上/屋根30mm以上)は横浜市の技術講習資料に拠っています。フラット35『木造住宅工事仕様書』の条文番号付き原文は書籍販売のみで、無料PDFでの公開が確認できませんでした。
遮熱シートについて。効果を定量化した公的機関・学会の一次資料は確認できませんでした。上位に出てくる記事の多くは遮熱材メーカー・施工会社によるものです(たとえば「断熱材を使うほど寝苦しい家になる」という主旨のPRESIDENT Online記事は、著者が遮熱材メーカーの代表取締役です)。このページでは遮熱シートは断熱材の代替にならないという定性的な整理にとどめます。出典:横浜市 CASBEE普及セミナー技術講習資料、フラット35 FAQ(小屋裏換気)、木の香の家(屋根裏温度の実測)。

充填断熱 と 外張り断熱 と 付加断熱

屋外 室内 断熱材 断熱材 柱 間柱 柱 通気層 柱・間柱を熱が通り抜ける = 熱橋 17% 厚みは柱の見付け寸法(105/120/140mm)が上限

INFILL充填断熱

  • 最も安い。柱の間という既存の空間を使うので、材料費だけで済む。
  • 木部が熱橋になる。建築研究所の面積比率では、外壁(柱・間柱間に断熱)の熱橋部分は0.17、断熱部分0.83。
  • 厚みが柱寸法で決まる。105mmか120mmか140mm。それ以上は物理的に入らない。
  • 繊維系断熱材では室内側の防湿層が必要。防湿フィルムは柱・間柱の見付面で30mm以上重ねて留め付け、断熱・防湿層のラインを途切れさせないことが基本(硝子繊維協会)。
屋外 室内 断熱材を外側に連続して張る 柱 間柱 胴縁 胴縁が貫通すると、充填と同じ熱橋率で評価される 厚みはメーカーの施工基準(例:100mm以下)に縛られる

OUTSIDE外張り断熱

  • 躯体が断熱材の内側に入るので温度が下がりにくく、結露に強い。
  • 仕様基準の要求熱抵抗が低い(4〜7地域の壁で充填2.7に対し外張2.3)。木部の熱橋がない分を制度が織り込んでいる。
  • 「外張りだから熱橋ゼロ」は誤り。建築研究所の扱いでは、断熱材を1層張りとし断熱材を貫通する木下地を設ける場合は、充填断熱と同じ面積比率を適用します。下地がない場合・2層以上張りの場合にはじめて構造材を熱橋と見なしません。
  • 厚みを自由に増やせない(次項)。
屋外 室内 付加断熱(外張り) 充填断熱 充填断熱 柱 柱の熱橋を、外側の層が覆って止める 105mm充填+ネオマ45mm外張りで R5.06(2×6の1.4倍)

ADDITIONAL付加断熱(充填+外張り)

  • 充填層の熱橋を外側の層が覆うので、壁のU値がほぼ半減する(下の試算)。
  • 柱寸法の上限を超えて厚みを足せる。105mm充填+ネオマ45mmでR5.06=2×6充填の1.4倍。
  • 最もコストが高い。33坪の実案件では92万円(税抜)の増額例(下の費用章)。
  • 外側の透湿抵抗に注意が必要。外側に透湿抵抗の高い材を持ってくると、内部結露の逃げ場がなくなります。
  • 等級6・7の現実解はここです。マグ・イゾベールの5〜7地域の仕様例でも、等級7だけが壁105mm×2層(充填+付加)になります。

木部の熱橋は、U値をどれだけ悪化させるのか

部位(木造軸組・充填断熱)熱橋面積比率
外壁(柱・間柱間に断熱)0.17
床(根太間断熱)0.20
床(大引間断熱)0.15
床(床梁土台同面・根太間)0.30
天井(桁・梁間)0.13
屋根(垂木間)0.14
枠組壁工法 外壁(スタッド等)0.20 + まぐさ0.03
外壁の試算(高性能グラスウール16K 105mm・λ0.038/柱間柱λ0.12)熱抵抗 RU値
断熱部(面積比 0.83)3.040.329
熱橋部=柱・間柱(面積比 0.17)1.150.868
面積比率法による壁全体2.380.421
+ネオマフォーム45mm を外張り(木下地なし1層)—0.207
※この2つ目の表は当社試算です(建築研究所の面積比率を用いて算出したもので、公表済みの試算の引用ではありません)。熱橋を無視した場合のU値 0.329 に対し、実際は 0.421。約28%悪化します。熱抵抗で見れば 3.04 → 2.38 で約22%の低下。そこにネオマフォーム45mmを外張りすると 0.207 とほぼ半減します。出典(面積比率):建築研究所「熱貫流率及び線熱貫流率」。

外張り断熱の厚みには、上限があります

「付加断熱を厚くすればいい」で済まない理由がここにあります。ニチハの外張り断熱工法の施工基準(横胴縁仕様)を見ると、そもそも適用できる断熱厚が「50mm超〜100mm以下」に限定されており、その範囲の中でもビスの長さと間隔、外壁材の重量まで細かく決まっています。

項目(ニチハ 外張り断熱工法 横胴縁仕様)規定
適用断熱厚50mm超〜100mm以下(これを超える厚さは基準の対象外)
木胴縁スギ材:厚18mm以上/ベイツガ材:厚15mm以上の乾燥材。出隅部は幅120mm(条件により90mm)
留付けビスシネジック『パネリードⅡ(プラス)』指定
ビス長さ断熱厚50〜65mm → φ6.0×135mm/65〜75mm → φ6.0×150mm/75〜100mm → φ6.0×185mm
ビス間隔補助桟部(横架材下地あり)227.5mm以下/その他 455mm以下
外壁材の重量制限モエン重量(気乾)20.4kg/㎡以下
適用製品モエンサイディング-M、W(14mm)、モエンエクセラード(16mm)に限定
この範囲を外れると、外壁脱落のリスクとメーカー保証の対象外という話になります。付加断熱の厚みは「断熱の理屈」だけでなく「外壁をどう留めるか」で決まる、というのが実務の現実です。出典:ニチハ「外張り断熱工法<ニチハ施工基準> 横胴縁仕様 断熱厚50mm超〜100mm以下 限定基準」(2023年4月制定/2025年12月改定)。

防湿層が省略できる条件

グラスウール、ロックウール、セルローズファイバーなどの繊維系断熱材を使う場合、外気等に接する部分には防湿層を設けることが原則です。省略できるのは次の3つの場合だけです。

  • コンクリート躯体または土塗り壁の外側に断熱層がある場合
  • 床断熱において、断熱材の下側が床下に露出する場合
  • 透湿抵抗比が基準以上である場合(1・2地域の外壁で5以上)
透湿抵抗比の全地域・全部位の基準値表には、今回到達できませんでした(1・2地域の外壁の「5以上」のみ確認)。気流止めの効果については、建築研究所の既存住宅改修の研究で Q値 3.49→3.33 W/㎡·K(約5%向上)、C値 19.4→15.8 cm²/㎡ という実測があります。同研究が挙げる断熱欠損の実態は、壁の防湿欠損/後付けエアコン配管工事による断熱材の巻き込み・垂れ・欠落/押入れ上部・廊下・トイレなど居室以外の未施工でした。出典:フラット35 省エネルギー性に関する基準(断熱等性能等級5)、建築研究所 桑沢保夫「既存住宅の省エネルギー改修に関する研究」。
費

30坪の家で、いくら変わるのか

最初にお断りします。断熱材の実勢価格(実行価格)が公開されている例はほとんどありません。手に入るのは「メーカー設計価格(材料のみ)」と「リフォーム相場(材工込み)」の2系統だけ。この2つを混ぜると数字が嘘になるので、分けて扱います。

材料費シミュレーション(30坪・材料のみ)

天井の必要R/面積4.0 / 50㎡
外壁の必要R/面積2.2 / 180㎡
床(その他)の必要R/面積2.2 / 50㎡
断熱材λ天井外壁床材料費 合計高性能GWとの差額
前提:延床30坪(約99㎡)の総二階を想定し、天井50㎡・外壁180㎡・床50㎡としています。厚みは「必要R×λ×1000」を5mm単位で切り上げた値です。単価はMXエンジニアリングが公開する「厚さ50mm・材料のみ」の比較を1mmあたりに割り戻したもので、同記事は「その他の材料や工数は含んでいない」と明記しています。施工費・防湿シート・気密テープ・付帯部材・下地の費用は一切含みません。λ は各メーカーの公表値を使っており、同記事が記載するλとは一部異なります。実際の見積りとは必ずずれる、概算のための道具として使ってください。

材料単価の出どころ(2系統を分けて表示)

MATERIAL ONLY材料のみ・50mm厚換算

断熱材(50mm厚)材料単価
グラスウール16K650円/㎡
現場発泡ウレタン100倍1,350〜1,500円/㎡
セルロースファイバー1,500円/㎡
ミラフォームΛ1,950円/㎡
現場発泡ウレタン30倍3,000円/㎡
出典:MXエンジニアリング。「単純に断熱材の価格のみを比較。材工費・施工費は含まない」と明記されています。

MARKET RANGE材料費の相場(リフォーム系)

断熱材1㎡単価
グラスウール/ロックウール600〜1,800円
ポリスチレンフォーム600〜3,000円
羊毛(ウールブレス)1,200〜3,600円
硬質ウレタンフォーム3,000〜6,000円
フェノールフォーム3,000〜6,000円
セルロースファイバー6,000〜9,000円
炭化コルク8,000円程度
出典:ホームプロ。いずれも材料単価で、施工費は別途「戸建て1㎡あたり4,000〜30,000円程度」とされています。セルロースは左の表で1,500円、こちらで6,000〜9,000円と桁が違います。こういうときは片方だけを載せないのが誠実です。

実案件の内訳——33坪をG1からG2へ上げたとき

数字の出どころがはっきりしている、いちばん使える実例です。延床約33坪・木造2階建て。外壁にネオマフォームt45の付加断熱を追加してHEAT20 G1をG2に上げた場合の内訳。

項目金額
外壁付加断熱 ネオマフォームt45 追加(材料)+50万円
外壁付加断熱 取付専用ビス+2万円
外壁付加断熱 大工取付手間(施工費)+15万円
建物高さ上げに伴う追加費用(熱橋低減のため)+25万円
合計92万円(税抜)/101.2万円(税込)
断熱材に直接起因する純増は「材料50万+手間15万=65万」。33坪なら坪あたり約2万円、延床㎡あたり約6,000円です。サッシは既に樹脂+アルゴンガスだったため変更なし。ビス代2万円と、建物高さ上げ25万円が発生しているところが、この内訳のいちばん参考になる部分です。断熱材の値段だけを比べていると、この2項目が見えません。出典:金子勉建築設計事務所。付加断熱の別の目安として、外壁180㎡に45mm級を足して材工共で概ね40万円前後という試算もあります(MXエンジニアリング:材料1,100〜1,500円/㎡+張り手間900円/㎡)。

断熱材を入れ替えたときの、1棟あたりの差額

比較差額出典の性格
グラスウール40万円 → セルロースファイバー約100万円約60万円工務店の公開情報(二次)
グラスウール40〜90万円 → アクアフォーム80〜150万円(延床100〜120㎡の全面改修)40〜60万円リフォーム系メディア(二次)
相対コスト:グラスウール1倍 → 硬質ウレタン1.5〜2倍、吹付断熱2〜3倍—専門家コラム(二次)
独立した2つの出典が、どちらも「1棟あたり40〜60万円の差」に収束しています。断熱材のグレードアップは、数十万円規模の判断だと考えておくとおおよそ外れません。

等級を上げるといくらかかるのか(すべて二次情報)

内容追加費用
総予算3,000万円・30坪で 等級4 → 等級6約60万円
総予算3,000万円・30坪で 等級4 → 等級7約300万円
等級5 → 等級6約100〜150万円
等級6にするための追加費用(冷暖房費は約30〜40%削減)約100〜200万円
30坪・東京神奈川の実売価格例:等級5 2,300〜2,350万円/等級6(2×6)2,450万円/等級7(2×6)2,650万円等級5→7で約350万円
国土交通省・建築研究所による「等級別の建設費増分」の公表試算は確認できませんでした。上の数字はすべて工務店・設計事務所・比較メディアの公開情報であり、幅も前提もばらばらです。目安として読んでください。なお日経アーキテクチュアには「等級7の材料費は等級4の3倍、付加断熱や3層ガラスで大幅増」という見出しの記事があります(本文は取得制限があり数値は未確認)。

仕様がどう変わるか(メーカーの一次資料)

部位(5〜7地域)等級4 (UA0.87)等級5 (UA0.60)等級6 (UA0.46)等級7 (UA0.26)
天井HG16-38 155mmHG24-35 155mmHG24-35 155mmHG24-35 155mm×2層
外壁HG16-38 90mmHG16-38 105mmHG36-32 105mmHG36-32 105mm×2層(充填+付加)
床HG24-36 80mmHG24-36 80mmHG24-36 80mmHG24-36 80mm
窓(部位U値)≧4.7≧2.31.401.00
床は等級4から等級7まで一切変わりません。等級6から等級7への跳ね上がりは、壁の付加断熱と窓U値1.00に集中している——それが一次資料から読み取れます。出典:マグ・イゾベール 5-7地域 外皮性能レベル別断熱仕様例。なお、アルミ樹脂複合ペアから樹脂サッシトリプルへの具体的な差額については、信頼できる出典のある金額を確認できませんでした。

光熱費はいくら下がるのか(国土交通省の試算)

地域現在の省エネ住宅ZEH水準の省エネ住宅削減額+太陽光
札幌市等年346,000円年250,000円▲96,000円/年年160,000円
東京都23区等年239,000円年193,000円▲46,000円/年年153,000円
前提:電気27円/kWh、都市ガス156円/㎥(換算係数46.05MJ/㎥)、灯油88円/L。太陽光は自家消費分のみで売電は考慮なし。令和4年11月時点。出典:国土交通省「年間の光熱費も節約できる!」。

正直に書きます。等級6の追加費用を、光熱費だけで回収するのは簡単ではありません。ある設計事務所の公開情報では、等級5で年約15万円の光熱費が等級6で年約12万円、年2〜3万円の削減。追加費用100〜150万円に対して「年3万円なら30年で90万円」と、回収しきらないことを率直に書いています。一方で「35年の住宅ローン期間でシミュレーションすると、光熱費の削減総額が追加費用を上回る」とする試算もあり、前提しだいで結論が変わります。投資回収年数の公的試算は確認できませんでした。

だからこそ、判断材料は光熱費だけではありません。冬の朝、非暖房室が何℃なのか。その土地の冬に、日射が当てにできるのか。壁の中が乾くのか。等級6という数字は、その問いに答えるための入口であって、答えそのものではない。

2026年度の補助金——等級6は「スタートライン」になりました

2026年度に実施中なのは「みらいエコ住宅2026事業(Me住宅2026)」です。前年度の「子育てグリーン住宅支援事業」とは別の事業名なので、間違えると信頼を落とします。

住宅タイプ1〜4地域5〜8地域古家除却加算対象世帯断熱等性能等級
GX志向型住宅125万円110万円なし全世帯等級6以上
長期優良住宅80万円75万円+20万円子育て・若者夫婦世帯のみ等級5以上
ZEH水準住宅40万円35万円+20万円子育て・若者夫婦世帯のみ等級5以上

GX志向型住宅の要件は、断熱等性能等級6以上に加えて、一次エネルギー削減率が再エネ除きで35%以上、再エネ含みで一般地域100%以上/寒冷地・低日射地域75%以上/多雪地域・都市部狭小地等は要件なし。そして高度エネルギーマネジメント(HEMS等)の導入。

スケジュール期日
着工要件2025年11月28日以降に基礎工事に着手したもの
交付申請予約2026年11月16日まで(ZEH水準住宅のみ2026年8月17日で終了)
交付申請2026年12月31日まで(ZEH水準住宅のみ2026年9月30日まで)
予算長期優良・ZEH水準 1,250億円(国土交通省)/GX志向型 750億円(環境省)
出典:みらいエコ住宅2026事業 公式サイト、国土交通省 事業内容説明資料。制度は変更されることがあります。申請前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。

最大125万円のGX志向型住宅は、断熱等級6が必須。つまり等級6は、もはや「高性能住宅の証」ではなく補助金を受け取るための最低ラインになりました。等級6を取ることは前提であって、差がつくのはそこから先——その土地の冬をどう読んで、どの断熱材をどこに、どう施工するか。このページが最初から最後まで言いたかったのは、その一点です。

もっとマニアな知識

断熱材の厚み換算表と、地域区分の早見表を配布しています

公式LINEで、このページの厚み換算表・地域区分早見表・断熱材比較表をPDFでお渡ししています。屋根、階段、外壁材、不動産の「マニアな知識」も順に公開しています。

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断熱材マニア / 株式会社Amigo・オサック「マニアな知識」
数値は原則として一次資料(法令・告示、公的機関の資料、メーカーの技術資料、学会論文)で確認しています。一次資料に到達できなかった項目は「確認できず」と本文に明記しました。二次情報は出典の性格を併記しています。設計値と制度の適用は、建設地の特定行政庁および各事業の公式要領によります。