備後の家づくり

断熱材を入れても「なぜか寒い」家の正体。府中の大工が「気密」を測る理由

前回のブログでは、備後地域の気候変化と「断熱」についてお話ししました。

今回はその続きです。実は、断熱材をしっかり入れたはずなのに「冬の朝、足元がスースーする」「エアコンの効きが悪い」というご相談が、府中市・福山市・尾道市のリノベーション現場で後を絶ちません。

その原因の多くは、断熱ではなく「気密」にあります。

こんにちは。広島県府中市の工務店、エムズワークスです。今回は、中古住宅の購入やご実家のリノベーションを考えている30〜40代の共働きのご夫婦に向けて、少し地味だけれど住み心地を大きく左右する「気密」の話をします。

気密とは「家の隙間をなくすこと」

気密性能は「C値」という数字で表します。家全体の隙間の面積を床面積で割ったもので、数字が小さいほど隙間が少ない家です。

たとえば延床30坪(約100㎡)の家でC値が5.0なら、家じゅうの隙間を集めるとハガキ約3枚分の穴が空いている計算になります。築30年前後の一般的な木造住宅は、実測するとこのくらいの数値が出ることが珍しくありません。

断熱材がセーターだとすれば、気密はウインドブレーカーです。

どんなに厚いセーターを着ても、風が吹き抜ければ暖かくない。断熱と気密は、どちらか一方だけでは効かない「セット」なのです。

府中の気候が、気密を「必須」にしている

なぜ私たちがここまで気密にこだわるのか。理由はこの土地の気候にあります。

夏:熱帯夜が2倍以上に増えた

気象庁のデータでは、福山観測所の熱帯夜(最低気温25℃以上)は2000年ごろの年間約20日から、2024年には48日に増えました。夜になっても外気温が下がらない日が、ひと夏に1か月半以上あるということです。

隙間の多い家では、夜のあいだ湿った熱い空気が壁の中や床下から入り続け、冷房を止めた途端に室温が戻ります。共働きで日中は誰もいないご家庭ほど、「帰宅後に一気に冷やして、寝ている間も保つ」ためには気密が欠かせません。

冬:内陸盆地の冷え込み

府中市は沿岸の福山と、中国山地の三次のちょうど中間にある内陸の町です。三次では冬日(最低気温0℃未満)が今も年間50日以上あり、府中も朝はしっかり冷え込みます。

冬の冷気は床下から入り、暖かい空気は天井から逃げます。この「上下の温度差」による空気の流れが、隙間の多い家では止まりません。足元だけ寒い、2階に上がるとムッとする、という現象の正体です。

霧と湿気:壁の中の結露

府中市の芦田川沿いは霧の多い土地です。湿気の多い空気が隙間から壁の中に入り込むと、断熱材の内側で結露し、柱や土台を腐らせる原因になります。これは気密がきちんと取れていない家で、リノベーション時に壁を開けて初めて見つかることが多い問題です。

気密は快適さのためだけでなく、家を長持ちさせるための工事でもあります。

豪雨のあとに効いてくる「気密」

この地域の家づくりで忘れてはいけないのが水害です。2018年7月の西日本豪雨では、福山市で24時間雨量238mmを記録し、芦田川水系を中心に約2,000haが浸水しました。1時間に50mm以上の激しい雨の頻度も、2000年代に比べて約1.4倍に増えています。

大雨のあと、床下に湿気がこもった状態で、床の隙間から室内に湿った空気が上がってくる。これがカビや臭いの原因になります。床の気密をきちんと取り、床下の通気や点検口を計画しておくことは、豪雨の多いこの地域では「水害後の暮らしやすさ」にも直結します。

エムズワークスの気密へのこだわり

1. 気密は「材料」ではなく「大工の手」で決まる

断熱材はカタログで性能が決まりますが、気密は現場で決まります。

配管や配線が壁を貫通する部分、窓まわり、コンセントボックス、床と壁の取り合い。こうした細かな部分をひとつひとつ気密テープやシートで処理していく作業は、大工の丁寧さそのものです。

エムズワークスには営業職がおらず、お打ち合わせから施工まで大工が直接担当します。「ここは図面には出てこないけれど、この家は隙間ができやすい」と判断できるのは、現場を知っている大工だからです。

2. 既製品で納まらない部分は、自社工場でつくる

築年数の古い家は、柱の寸法も壁の厚さも一軒ごとに違います。既製品の気密部材がそのまま使えないことも多く、無理に合わせると隙間が残ります。

エムズワークスは自社工場を持っているので、その家の寸法に合わせた部材を製作して納めることができます。「きれいに納まっていて当たり前」を、見えない気密の部分でも大切にしています。

3. 数字で確かめる

私たちは「気密はやりました」という言葉ではなく、数字で確認することを大切にしています。

この地域は国の省エネ基準で「6地域」にあたり、C値は0.5以下がひとつの目安です。ここまで気密が取れると、断熱とあわせてエアコン1台で家全体の温度を保つことも現実的になり、夏の冷房負荷を大きく下げることができます。フルリノベーションの際は、気密測定を行って実際の数値をご確認いただくことをおすすめしています。

年収700万円・子ども2人のご家庭が気密で得られるもの

気密工事は、目に見える設備と違って「やった実感」が持ちにくい工事です。だからこそ、後回しにされがちです。

でも、光熱費で考えてみてください。府中市の平均所得は5市の中で最も低く、建材の高騰もあって「広さか性能か」を選ばざるを得ない場面が増えています。そんな中で、断熱と気密にきちんとお金をかけた30坪前後のコンパクトな家は、毎月の電気代を抑え、これから30年住み続ける間ずっと効き続けます。

朝、暖房をつける前から寒くない洗面所。夜、冷房を切っても寝苦しくない子ども部屋。

共働きで家にいる時間が限られるご家庭ほど、家にいる時間の質を上げる投資として、気密は費用対効果の高い選択です。

府中の家を、次の世代に残すために

エムズワークスの代表は、府中市で生まれ育った現役の大工です。

府中市は5市の中で最も人口減少が速く、空き家率は25%を超えると推計されています。私たちが既存住宅のリノベーションに力を入れているのは、「壊して建て替える」だけでは、この町の家も、家を直せる職人も残らないと考えているからです。

気密は、古い家を長持ちさせるための工事でもあります。壁の中の結露を止め、湿気を入れず、構造を守る。それは30年後にこの家をお子さんの世代に渡せるかどうかにつながります。

猛暑と冷え込みの振れ幅、霧の湿気、芦田川の水害履歴。こうしたこの土地の条件を身体で知っている大工だからこそ、「広島県ならどこでも同じ」ではない、府中・福山・尾道の暮らしに合った気密をご提案します。

「うちの家、どのくらい隙間があるの?」

そんな疑問からで構いません。ドアノブ1つの「ちぃと」した困りごとから、気密・断熱を含めたフルリノベーションまで、大工が直接お話をうかがいます。ご相談・お見積りは無料です。お電話・メール・LINEからお気軽にお問い合わせください。


出典:気象庁「過去の気象データ検索」(福山・三次観測所)/内閣府「平成30年7月豪雨の概要」/総務省「住民基本台帳人口」2025年/国交省「住宅・土地統計調査」/HEAT20設計ガイドブック

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