石川の家づくり

素足で暮らせる家か、スリッパが手放せない家か。金沢の湿気と底冷えから考える「フローリング」の選び方

断熱、気密、デザイン、防犯、窓、外壁、屋根。「金沢の家づくり」シリーズ、8回目のテーマはフローリングです。

ここまでは主に家の「外側」を守る話をしてきましたが、フローリングは家の中で家族が最も長く、最も直接触れている部位です。朝起きて最初に足を着けるのも、子どもが寝転がっておもちゃを広げるのも、夜、疲れて帰ってきて座り込むのも、すべて床の上。

そして床の心地よさは、床材だけでは決まりません。金沢の湿気、冬の底冷え、夏の暑さ、そして家の断熱・気密性能が、同じ床材でもまったく違う「足の感覚」をつくります。私たちメープルホームが、この土地の床をどう考えているかをお話しします。

金沢の実家の床は、なぜ冷たかったのか

金沢で育った方に「実家の冬の床」を思い出してもらうと、多くの方が同じことを言います。「廊下が冷たくて、スリッパなしでは歩けなかった」「こたつから出られなかった」「お風呂場の床が氷みたいだった」。

これは床材が悪かったからではありません。床の冷たさの正体は、床材ではなく、床の下と家全体の性能です。

床下から冷気が上がってくる、隙間から冷たい空気が床の上を這う、暖房で温めた空気が天井にたまって足元まで届かない。こうした家では、どんな高級な無垢材を張っても床は冷たいままです。逆に、床下と家全体の断熱・気密がしっかりしていれば、一般的なフローリングでも「素足で歩ける床」になります。

つまりフローリングを選ぶ前に、まず家の性能を決める。これが順番です。

金沢の気候が、床に与える3つの試練

① 湿気:床材が伸び、縮み、カビる

金沢は年間を通じて降水日数が多く、日本でも指折りの多湿な街です。木は湿度によって伸び縮みする素材ですから、金沢の床は一年の中で膨らんだり縮んだりを繰り返しています。

無垢材の床は、夏の高湿期にはわずかに膨らみ、冬の乾燥期には縮んで目地に隙間ができる。これは不具合ではなく木の性質ですが、湿度変化が大きい家では反りや床鳴りにつながることもあります。また、床下の湿気対策が甘い家では、床下でカビや腐朽が進み、床がふわふわと沈む、という劣化が起きます。金沢の床は、床材の選び方以上に、湿気をどう管理するかで寿命が決まります。

② 冬の底冷え:床から奪われる体温

雪の量は減ったとはいえ、日本海側の湿った寒さは今も金沢の冬の日常です。人は足元が冷えると全身が冷えたと感じ、逆に足元が暖かいと室温が少し低くても快適に感じます。共働きで朝の時間に余裕のないご家庭では、「起きてすぐ、暖房が効く前の床が冷たくない」ことが、冬の毎朝の小さなストレスを消してくれます。

③ 夏の暑さ:素肌で触れる床のべたつき

市場調査のデータによれば、金沢の年平均気温は25年で+1.8℃、猛暑日は3日から22日へと7倍に増えました。金沢の夏は今、東京・大阪と同じ暑さです。

夏の床に求められるのは、素足で触れたときの「さらっとした感触」です。湿度が高く蒸し暑い日、床がべたつくかどうかは、床材の調湿性と、家全体の除湿・冷房が効いているかで決まります。お子さんが床に寝転がって遊ぶことの多い夏こそ、床の感触は家族の快適さに直結します。

メープルホームの床:性能が、床の感触をつくる

家全体の温度差が小さいから、床が冷たくない

私たちが標準採用しているLIXILのスーパーウォール(SW)工法は、硬質ウレタンフォームの断熱材を使った高断熱・高気密の壁で家を構成します。基準としているHEAT20 G2(UA値0.46以下)の断熱性能と、全棟気密測定で確認する気密性能が揃うと、家の中の温度差が小さくなります。

実際にお住まいのご家族からは、「エアコンのあるLDKと脱衣所の温度差が1℃ほど」「家の中では自然と薄着になって、外に出てはじめて寒さに気づく」という声をいただいています。廊下も、脱衣所も、子ども部屋も、リビングと同じ温度。この「どこにいても同じ床の感触」は、床材ではなく家の性能がつくるものです。

気密の高い家では、床の上を這う冷気も、天井にたまる暖気も生まれにくく、暖房の熱が足元まで均一に届きます。「床暖房を入れないと足元が寒い」と言われがちな金沢で、床暖房なしでも素足で暮らせる家をつくれるのは、この性能があるからです。

冬の太陽を、床に届ける

デザインと窓の回でお話しした、金沢の太陽高度。冬至の正午は約30°で、南面に900mmの庇を設けても、冬の低い日差しは床の奥2.5mまで届きます。

この日差しが当たる床は、冬の日中、太陽の熱を受けて暖まります。私たちが大切にしているパッシブ設計は、まさにこの「冬の太陽で床を暖める」ことを間取りに組み込む考え方です。南の窓の前に、家族がいちばん長く過ごす場所を置く。そこに届く日差しが、暖房の助けになる。フローリングは、その熱を受け止め、ゆっくり放してくれる面でもあります。

そして、日差しが届く床は色の見え方も変わります。同じ床材でも、金沢の冬の低い光が横から差し込む部屋では、木目の陰影がはっきり浮かびます。床材の色は、サンプルを蛍光灯の下で見て決めるのではなく、その家に入る光を想像して決めるべきものです。

床下の湿気を、構造から管理する

多湿な金沢で床を長持ちさせるには、床下の湿気対策が欠かせません。私たちは、基礎と床の断熱・気密を家全体の外皮の一部として設計し、床下に湿気をためない構成を基本としています。壁の中に湿気を入れないという気密の考え方は、床下にも同じように当てはまります。

共働き・子ども2人の毎日に、床はどう応えるか

30〜40代・共働き・お子さん2人。このご家庭の床は、家の中でいちばん働いています。

食べこぼし、おもちゃの傷、走り回る足音、そして毎日の掃除。「本物の木の床がいいけれど、傷や汚れが心配」という声は、打ち合わせで最もよく聞くもののひとつです。

ここで大切なのは、正解は一つではないということです。無垢材は傷も味になり、経年で色が深まり、調湿性で夏はさらっと冬はほのかに暖かい一方、水や汚れには気をつかいます。表面に強い加工を施した複合フローリングは、傷・汚れ・水に強く、共働きの掃除の負担を減らしてくれる一方、足触りの「木らしさ」は無垢材ほどではありません。

メープルホームでは、女性プランナーが中心になって間取りを提案し、整理収納アドバイザーやインテリアプランナーの資格を持つスタッフが暮らしの目線で仕上げをご提案しています。「リビングは足触り重視で無垢材、キッチンと水まわりは水に強い床材に」「子ども部屋は将来の張り替えも視野に」といったように、場所ごとに床材を使い分けることも、家事の負担と心地よさを両立させる現実的な選択です。

北欧デザインをベースにした規格住宅TRETTIOでも、床材はプロが厳選した組み合わせの中から選んでいただけます。金沢市の30〜40代の世帯年収は520〜640万円程度で、市場調査でも総予算の壁が指摘されています。床材で背伸びをするより、家の性能に予算を配分し、床は暮らし方に合わせて賢く選ぶ。これが、この世代の家づくりで私たちがおすすめしている考え方です。

将来の暮らしを、床が支える

市場調査によれば、対象エリアでは50〜60代の人口が30代の2.4倍にのぼり、私たちの会社でも二世帯住宅の施工が増えています。「冬でも快適な家は、高齢の両親も安心して暮らせる」と好評をいただいているのは、床の冷たさによるヒートショックのリスクが小さいからでもあります。

30〜40代で建てる家も、いずれご夫婦が60代、70代になる家です。段差のない床、冷たくない床、滑りにくい床は、今のお子さんのためであると同時に、30年後のご自身のためでもあります。

金沢の床は、「家の性能」で決まる

湿気が高く、冬は底冷えし、夏は東京並みに暑い。金沢の床が心地よいかどうかは、床材のカタログでは決まりません。床下の湿気管理、家全体の断熱と気密、冬の太陽を床に届ける窓の配置。その土台があってはじめて、選んだ床材が本来の感触を発揮します。

素足で暮らせる家か、スリッパが手放せない家か。その差をつくるのは、この土地の気候を知り、性能を数値で語れる工務店の設計です。床材のサンプルを手に取る前に、ぜひ一度、私たちの家の床を素足で歩いてみてください。


出典:気象庁「金沢」観測所データ、国勢調査、住民基本台帳、LIFULL HOME’S住まいインデックス、厚労省国民生活基礎調査ほか(Amigo建築コンサルティング「金沢市域住宅市場調査」2026.06より)

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