マニアな知識 / 性能・構造 / Super Wall
冬の朝、リビングは暖かいのに廊下とトイレは寒い。夏は2階だけが蒸し暑い。その原因の多くは、目に見えない「壁の中」と「すき間」にあります。スーパーウォール(SW)工法は、LIXILが開発した高気密・高断熱・高耐震のパネル工法です。これから家を建てる方に向けて、仕組み・数字・費用・会社選びのポイントまでを、できるだけやさしい言葉で解説します。
日本の木造住宅で最も多い「木造軸組(在来)工法」の柱と梁に、工場でつくった高性能な断熱パネルを組み合わせる工法です。柱と梁でつくる骨組みに、パネルの面の強さを足して、家全体を一つの「箱」として固めます。
硬質ウレタンフォームの断熱材と構造用面材を、工場で一体に成形したパネル。断熱・気密・耐震を1枚で担います。
熱の出入りが一番大きい窓を、樹脂窓などの高断熱サッシで固めます。
すき間が少ないからこそ、空気の入口と出口を設計どおりにコントロールできます。
壁・床・天井を一体化した箱形の構造。地震や台風の力を家全体で受け止めます。
SW工法は、LIXILの研修・認定を受けたSW加盟の工務店・ビルダーだけが施工できます。大手ハウスメーカーの独自工法とは違い、地域の工務店が「性能の高い家」をメーカー仕様と保証の裏づけつきで建てられる仕組みです。1995年の誕生以来、全国で採用されています。
断熱材の性能は「熱伝導率(λ:ラムダ)」という数字で比べます。小さいほど熱を通しにくい材料です。SWパネルに使う硬質ウレタンフォームは、一般的なグラスウールのおよそ半分のλ。同じ厚さなら約2倍の断熱性能になります。
単位:W/(m·K)。グラスウールは一般的な製品値、硬質ウレタンフォームはSWパネルで用いられる値の一例です。実際の製品・仕様で数値は異なります。
断熱性能が上がると、部屋ごとの温度差が小さくなります。LIXILの資料では、外気0℃・暖房20℃の条件で、一般的な家はリビングとトイレの温度差が約9℃。HEAT20 G2レベルの家では約5℃まで縮まります。寝る前に暖房を切っても、翌朝のリビングが約15℃を保つという試算もあります(一般的な家では10℃を下回る)。
冬の家の寒さは「我慢」ではなく「健康」の問題です。暖かい部屋から寒い脱衣室・浴室へ移動したときの急な温度変化(ヒートショック)を減らすことが、高断熱住宅のいちばんの価値と言ってもいいかもしれません。SWの家に住む4,343人へのアンケートでは、約8割が「住んでから健康面で改善があった」と回答しています。
気密とは、家のすき間の少なさのことです。どれだけ厚い断熱材を入れても、すき間から冷たい空気が入れば台無しになります。SW工法の気密が高い理由は、パネルそのものが空気を通さない「気密層」になっているからです。
C値(相当すき間面積)は、家の床面積1㎡あたりに何cm²のすき間があるかを表す数字です。小さいほど高気密。C値 × 延床面積 で、家じゅうのすき間を集めた面積がわかります。SWの家はC値1.0以下を基準に、全棟で専用の機械を使って気密測定を行います。下のスライダーで、あなたの家のすき間を確かめてみてください。
C値1.0の30坪の家なら、すき間は家全体でもはがき1枚分以下。かつての省エネ基準(寒冷地以外)で目安とされたC値5.0の家と比べると、すき間は5分の1です。
| C値 | 30坪(約99㎡)のすき間 | はがき換算 | イメージ |
|---|---|---|---|
| 5.0 | 約496 cm² | 約3.4枚 | かつての省エネ基準の目安(寒冷地以外) |
| 2.0 | 約198 cm² | 約1.3枚 | かつての寒冷地の基準の目安 |
| 1.0 | 約99 cm² | 約0.7枚 | SW工法の基準。計画換気が設計どおり働く目安 |
| 0.5 | 約50 cm² | 約0.3枚 | 施工精度の高い工務店が目指す水準 |
ポイントは「測って、数字で見せる」こと。気密は完成後に目で見て確かめることができません。SW工法では全棟で気密測定を行い、結果を報告書で受け取れます。性能を「つもり」ではなく「実測値」で確認できるのが、SWの家の大きな安心材料です。
「高気密の家は息苦しいのでは?」とよく聞かれます。実は逆です。すき間だらけの家では、換気扇を回しても近くのすき間から空気が入るだけで、部屋の奥まで新鮮な空気が届きません。ストローに穴が開いていると飲み物を吸えないのと同じです。
建築基準法で求められる24時間換気。SWの家は、空気の入口と出口を決めて、家全体に新鮮な空気を行き渡らせます。
第1種換気「エコエア90」は、捨てる空気の熱を90%回収してから外気を取り込みます。冬に冷たい外気がそのまま入ってこないので、足元が冷えにくくなります。
エコエア90のフィルターは、2.0µmの粒子を90%以上捕集。花粉や黄砂の季節も、窓を開けずに換気できます。
換気方式は、熱交換型の第1種換気(エコエア85・90)と、排気だけを機械で行う第3種換気から、地域や予算に合わせて選べます。寒い地域や、温度・湿度の快適さを重視するなら第1種の熱交換型がおすすめです。
出典:LIXIL スーパーウォール工法 特長(空気環境)在来工法は柱・梁・筋かいなど「線」で力を受けます。SW工法はそこに強いパネルの「面」を加え、床・壁・天井を一体化した箱(モノコック構造)にします。地震や台風の横からの力を一点に集めず、家全体に分散させます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 壁倍率 | 高性能SWパネルは4.3倍(国土交通大臣認定)。2.5倍のパネルと組み合わせ、効率よく耐力壁を配置できます。壁倍率は「その壁がどれだけ横からの力に強いか」を示す数字で、数字が大きいほど強い壁です |
| 耐震等級 | 最高ランクの耐震等級3での設計が推奨されています。等級3は、消防署・警察署など防災の拠点となる建物と同じレベルの基準です |
| 制震 | 制震テープを使った仕様では、実大振動実験で揺れ幅が約40mm→約20mmと、約半分に抑えられました(兵庫県南部地震の揺れを2回加えた実験) |
| 実際の地震 | 2004年の新潟県中越地震で震度6強以上を記録した地域の調査では、SWの家167棟が被害なし、39棟が軽微な被害でした |
家を内側から傷める原因のひとつが、壁の中で起きる結露(内部結露)です。目に見えないところで断熱材が湿り、木材が腐り、カビが発生します。硬質ウレタンフォームは水や湿気を通しにくい素材で、壁の中に湿気をため込みにくいのが特長です。
壁・屋根・小屋パネルの硬質ウレタンフォームが、内部結露で劣化しないことを60年間保証。一般的な住宅の瑕疵保証(10年)では対象外になる部分まで、メーカーが保証します。
築20年のSWの家を解体した際、パネルの内部にカビや結露の跡はなく、建築時の状態が保たれていたことが確認されています。
SW工法は、パネル・高断熱サッシ・計画換気・気密測定がセットになるため、最低限の性能でつくる一般的な在来工法と比べると建築費は上がります。ただし、その差は「何と比べるか」で大きく変わります。
| 比べる相手 | 差額の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 最低限の省エネ基準(等級4)の在来工法 | 建築費の1〜2割程度高い例 | 断熱材・窓・換気・気密測定がすべて上乗せになるので、差は大きく見えます |
| 同じ性能(等級5〜6・樹脂窓・第1種換気)をそろえた在来工法 | 差は大きく縮まる | 比べるべきはこちら。在来工法でも高性能にすれば、材料と手間のコストは同じように上がります |
冷暖房の効きがよく、エアコン中心で家全体を快適にしやすくなります。毎月の光熱費の差は、30年・35年の住宅ローン期間で積み上がります。
国の補助制度や住宅ローン減税は、省エネ性能が高い住宅ほど優遇されます。断熱等級6以上が求められる制度もあり、高性能な仕様にしておくほど選択肢が広がります。
内部結露による断熱材や構造材の傷みは、気づいたときには大がかりな工事になります。60年無結露保証は、その見えないリスクへの備えです。
見積もりを比べるときは「坪単価」より「同じ性能で比べる」。UA値(断熱)、C値(気密)、耐震等級、窓の種類、換気の方式。この5つをそろえた上で金額を比べると、SW工法の本当の価値が見えてきます。
どんな工法にも得意・不得意があります。SWの家で後悔しないために、設計の段階で知っておきたいポイントをまとめました。どれも、知っていれば対策できることばかりです。
パネルが耐力壁になるため、壁一面の大開口や極端に複雑な形には工夫が必要です。
対策間取りの初期段階から、SWの設計に慣れた担当者と窓・吹き抜けの位置を決めましょう。耐力壁のパネルは、後から撤去したり大きな穴を開けたりできません。
対策子ども部屋の仕切りなど、将来変えたい壁は耐力壁にしない設計にしておきましょう。室内に排気を出す暖房は、高気密の家では空気を汚し、一酸化炭素のリスクもあります。
対策エアコンや床暖房など、室内で燃焼しない冷暖房を計画しましょう。そもそも少ない台数で家全体が暖まります。フィルターが詰まると換気量が落ち、空気の質や結露に影響します。
対策数か月に一度の掃除と定期交換を習慣に。手の届く場所に本体を設置してもらうと楽です。外の音が入りにくい反面、焼き肉のにおいや室内の音が残りやすいと感じる方もいます。
対策キッチンの換気計画と、吸音性のある内装材の採用で和らげられます。SW加盟の工務店でしか建てられないため、比べられる会社の数は少なくなります。
対策下の「会社選びのチェックリスト」で、施工実績と実測データを確認しましょう。SW工法は「メーカー仕様+保証」という土台がある工法です。ただし、最終的な仕上がりは工務店の設計力と施工精度で決まります。打合せのときに、次の7つを聞いてみてください。
基準はC値1.0以下ですが、実際には0.5以下で安定させている会社もあります。平均でどれくらいですか?
と聞くのがコツです。
完成時だけでなく、工事の途中(断熱・気密工事の完了時)にも測ると、すき間が見つかったときに手直しできます。
断熱等級5・6・7のどれを目指すかで、窓やパネルの仕様が変わります。建てる地域に合った目標値を確認しましょう。
「等級3相当」ではなく、計算で確認した等級3かどうか。許容応力度計算まで行う会社だとさらに安心です。
家の熱の出入りが一番大きいのは窓です。樹脂窓か、ペアガラスかトリプルガラスかを確認しましょう。
熱交換型の第1種換気かどうかで、冬の快適さと光熱費が変わります。フィルター交換の費用も聞いておきましょう。
完成見学会や、実際に住んでいる家の見学ができるか。冬や夏に体感できると、数字の意味が実感できます。
すき間が少ないぶん、計画換気で空気の入口と出口をコントロールしているので、むしろ家じゅうの空気がきちんと入れ替わります。約2時間で家全体の空気が入れ替わる設計です。
ツーバイフォーは、規格材の枠組みと面材で壁をつくる「壁式」の工法です。SW工法は、日本の在来工法(柱・梁)をベースに高性能パネルを組み合わせるので、柱と梁による設計の自由度を残しながら、面の強さと高い断熱・気密を得られます。なお北海道・東北向けには、2×6工法用のSWパネルもあります。
断熱は冬だけでなく夏の暑さも防ぎます。ただし、窓から入る日射の熱は大きいので、軒や庇、外付けブラインドなど日射を遮る設計とセットで考えるのが大切です。
LIXILにはリフォーム向けのスーパーウォール工法もあり、既存住宅の断熱・耐震性能を高める改修に使われています。建物の状態によって適用できる範囲が変わるため、対応している施工会社に相談してください。
パネルの厚み、窓の性能(トリプルガラスなど)、付加断熱(DUAL EXパネル)などの組み合わせで、高い等級を目指せます。地域と目標値によって必要な仕様が変わるので、設計段階でUA値の計算を依頼してください。
いいえ。LIXILの認定を受けたSW加盟の工務店・ビルダーだけが施工できます。工務店のホームページで「スーパーウォール」「SW工法」の取り扱いを確認するか、LIXILのサイトで探すことができます。
もっとマニアな知識
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