マニアな知識 / 屋根

屋根の形は、気候が決めている。

勾配は意匠ではなく、日射角度・降雨強度・積雪荷重・風圧力の答えとして決まります。数値と法令の根拠から、屋根の形と屋根材の選び方をたどる読み物です。

41.5%新築の片流れ屋根の割合。2017年の30.5%から最多に逆転(フラット35住宅仕様実態調査)
約5倍軒ゼロ住宅の雨漏り発生確率。雨漏り箇所の71.8%が軒の出のない部分(JIO)
950mL4寸勾配・風速30m/sで屋根材の下に入る水量(1㎡・1分あたり/国総研)
0%台風15号で全数緊結を採用した築10年未満の建物の被害率。築40年以上は100%(全瓦連)
勾

まず、勾配を触ってみる

屋根勾配は「寸」「度」「%」の三通りで語られます。%は寸を10倍するだけですが、角度は比例しません。4寸は40%ですが、角度は21.8°であって36°ではない——ここが最初のつまずきです。

角度21.8°
百分率40%
勾配係数1.077
形状係数 μb0.917
水平投影100㎡の実面積107.7 ㎡
3寸との材料差+3.2%
屋根足場不要
太陽光の最適角30°との差−8.2°
μb は建築基準法施行令第86条第4項の √cos(1.5β)。勾配60°超は積雪荷重を0とできます(雪止めがある場合を除く)。屋根足場はおおむね6寸以上で必要になるという実務の目安で、海風・ビル風が強い地域では5寸以下でも設置します。
10 4 21.8° 棟高 軒先 軒先
勾配三角(緑)は寸勾配の定義そのもの。水平10に対して垂直がいくつ上がるか、を屋根面に重ねて表示しています。

この勾配で葺ける屋根材

ここで大事なのは、メーカーが示す数値には「標準(推奨)勾配」と「条件付きの限界値」の二段があることです。限界値だけを見て「アスファルトシングルは1.5寸で葺ける」と考えるのは危険で、それは専用の下葺材と接着工法に切り替えた場合の1社の仕様です。標準施工の下限は3寸です。

標準(推奨)勾配の範囲 条件付き(専用下葺材・流れ長さ制限・地域制限) いま選んだ勾配 細い縦線=4寸(どの屋根材でも標準施工できるライン)
帯の右端は10寸です。緩勾配ほど選べる材料が減り、片流れ・箱型のモダンな外観を選んだ時点で屋根材が決まってしまう、という関係になります。逆に4寸を確保しておけば、将来の葺き替えで屋根材を自由に選び直せます。

標準勾配と条件付き最低勾配(メーカー施工要領書ベース)

屋根材(代表商品)標準(推奨)条件付き下限条件・制限
金属 折板0.3寸—メーカー各社の資料で共通して示される工法別の最低勾配(3/100)
金属 立平(縦葺き・嵌合)2.5寸0.5寸0.5寸は工法別の下限値であって推奨値ではない。緩勾配では下葺材上の滞留水が排水できず、釘・ステープルの貫通孔から漏水する。現場側は2.5寸以上を推奨
金属 一文字葺き3.0寸—工法別の最低勾配(30/100)。横葺きは資料により20〜25/100と幅がある
金属 横葺き スーパーガルテクト3.5寸2.5寸2.5〜3.5寸未満は粘着層付き改質アスファルトルーフィング必須+横ジョイント部すべてにジョイント下地+流れ長さ7m以下。積雪量の多い地域、沖縄県及び離島(一部離島を除く)は施工不可
金属 横葺き 横暖ルーフ3.5寸2.5寸標準は流れ長さ13m以下。2.5〜3.5寸未満は防水強化仕様(片面粘着層付き改質アスファルトルーフィング)。垂直積雪量120cm超は段数検討
石粒付き金属 ディプロマットスター2.5寸—メーカー公表の施工可能範囲が2.5寸勾配以上
化粧スレート コロニアルグラッサ3.0寸2.5寸2.5/10は流れ長さ5m以下の小面積限定。積雪施工地域(年平均最深積雪30〜100cm)は3/10が施工不適で3.5/10以上。100cm超は施工不可地域
ROOGA[鉄平]2.5寸—2.5〜10寸(寄棟は2.5〜8寸)
平板瓦 スーパートライ110 タイプⅠPlus3.0寸2.0寸3寸未満は改質アスファルト又は粘着層付ルーフィング必須(快適ロール・透湿ルーフィングは使用不可)。軒先1,000mmはルーフィング2重張り、緩勾配は角材の瓦座を推奨
平板瓦 イーグルエクサマックス3.0寸2.0寸3寸以下は軒先の逆勾配防止、瓦座高さ40mm以下推奨、半瓦やシーラーの追加施工
平板瓦 スーパートライ110 タイプⅠ4.0寸—4.0寸未満は施工不可(タイプⅠPlusの使用を検討)
防災J形瓦エース4.0寸2.5寸メーカーは2.5/10から標準屋根勾配として示すが、2.5/10の許容流れ長さは3.8mまでで実用範囲は狭い。4.0/10で10m、5.0/10で15m、6.0/10で21m
シングル ロアーニⅡ3.0寸1.5寸1.5〜3寸未満は下葺材をアスヤンSB200(自着層付)に変更し、接着工法に切り替えた場合のみ。積雪地は3/10〜
シングル リッジウェイ3.0寸2.0寸2.0寸は片面粘着層つきルーフィング材の使用時。低勾配と積雪地域は同ルーフィングが必須
シングル アルマ3.5寸2.5寸一般地域は3.5〜27.5寸が標準。2.5〜3.5寸未満は専用施工仕様(片面粘着層付ルーフィング+流れ長さ10m以下+シングルセメント併用)。多雪地域(垂直積雪量およそ80cm超)でも3.5寸以上が必要で、勾配により施工不可の範囲がある。基準風速38m/s以上の強風地域は1枚6本留めの専用施工
シングル オークリッジスーパー3.5寸2.0寸2〜3.5寸未満は低勾配仕様。米国IRCは2:12が絶対下限で2:12〜4:12は下葺材2層必須、NRCAは4:12(約4寸)以上を推奨
出典:田島ルーフィング ロアーニⅡ FAQ、旭ファイバーグラス リッジウェイQ&A、ニチハ アルマ設計施工資料、アイジー工業 施工説明書、KMEW 設計施工基準、鶴弥 タイプⅠPlus施工要領書、マルスギ 平板瓦施工要領書、ディートレーディング、NRCA Roof slope guidelines、神清(立平の緩勾配リスク)。金属屋根の工法別最低勾配は、日本金属屋根協会のサイトが取得制限のため一次資料に到達できていません。メーカー各社(セキノ興産・三晃金属・カナメほか)の資料で共通して示される値を採っており、横葺きは20/100とする資料と25/100とする資料があります。
形

屋根形状:取合いの数が寿命を決める

棟・けらば・谷・壁際といった取合いが多い形ほど雨漏りします。逆に言えば、形の選択はデザインの問題ではなく、雨の入り口をいくつ作るかという問題です。

この10年で標準解が入れ替わった

屋根形状平成29年度令和5年度動き
片流れ30.5%41.5%最多に逆転
切妻40.7%31.5%首位から後退
寄棟13.2%13.2%横ばい
段違い(招き含む)9.8%10.6%微増
無落雪屋根—1.3%—
陸屋根1.0%1.0%横ばい
入母屋0.2%ほぼ消滅平成7年度は約5%
出典:住宅金融支援機構【フラット35】住宅仕様実態調査。同じ調査で屋根材は金属が42.1%→55.5%、化粧スレート27.3%、粘土瓦11.0%。片流れ屋根では金属屋根が70.1%を占めます。

片流れ屋根の雨漏りは、棟部で起きる

三州瓦の神清は、新築の瑕疵担保責任保険の雨漏り事故のうち75%以上が片流れ屋根で、その浸入部位は棟部50%・けらば部27%・軒先部23%だと指摘しています。

理由は形状にあります。片流れの頂部では野地板の先端が室内側へ下がる逆勾配になり、野地板と破風板の境から入った水が野地板の裏面を伝って室内へ流れます。しかもそこは建物で最も高く、風圧が最大の位置です。

けらばの延長も切妻の2倍。同じ建築面積ならリスクは単純計算で2倍以上になります。

この75%は同社が保険データとして紹介している数値で、一次出典(保険法人名・統計年)は公表されていません。
外壁 破風板 吹き上げ 伝い水が裏面へ 小屋裏・室内 屋根面(1面)
頂部は棟ではなく壁との取合い。入った水は屋根面に戻らず、野地板の裏を室内側へ伝います。

12種の形と、その代償

切妻

2面・棟1本・谷なし。取合いが最も少なく、南面を大きく取れる。

雨◎ コスト○ 太陽光◎

寄棟

4面。大棟1+隅棟4。全周の壁面を守るが小屋裏が小さく、材料ロスが大きい。

雨○ コスト△ 耐風◎

片流れ

1面のみ。最安・最短工期で太陽光を最も効率よく載せられるが、頂部(橙)とけらばが弱点。

雨△ コスト◎ 太陽光◎

方形

正方形平面の四角錐。大棟がなく雨に強いが、小屋裏に湿気が滞留しやすい。

雨◎ 太陽光×

入母屋

上部が切妻+下部が寄棟。矢切から湿気を逃がせるが部材が多く最も高コスト。

コスト× 耐風◎

招き・差し掛け

段違いの2面。段差部(橙)に窓が取れるが、そこが弱点にもなる。1階屋根は点検しやすい。

雨△ コスト○

陸屋根

勾配で流さず防水層で守る。1/100〜1/50の水勾配とドレン(青)。10〜15年ごとの更新費が続く。

防水必須
内樋

バタフライ

中央が低いV字。無落雪屋根の一種で、中央の内樋(橙)に排水が集中する。詰まりが致命的。

雨× 積雪対応

のこぎり(M形)

片流れの連続。垂直面(橙)にハイサイドライトが取れるが、足元に谷が連続する。

雨× 採光◎

越屋根

大屋根の上に小さな切妻。側面の開口(橙)で排煙・換気・採光を同時に解く伝統形式。

通風◎ コスト×

腰折(マンサード)

途中で勾配が変わる2段勾配。小屋裏を広く取れるが、折れ点(橙)の処理が要になる。

小屋裏◎
谷

複合屋根

L字・T字プランで複数形状を組み合わせたもの。内側の角から必ず谷(橙)ができ、最もリスクが高い。伏図で見ると分かります。

雨× コスト×
「招き屋根」と「差し掛け屋根」は資料により定義が揺れます。ここでは段違いの2面という共通点でまとめています。
日

日射:太陽の角度は、地域でこれだけ違う

南中高度は緯度で決まります。夏至の南中高度は札幌70.4°に対して那覇87.2°で、同じ日本でも17°近く違います。だから同じ庇の出、同じ屋根勾配の設計図が全国で通用しません。窓高さ2mを夏至に遮る庇は、札幌712mm・東京432mm・那覇98mm——札幌と那覇で7倍以上の差です。

h(夏至)= 90 − 緯度 + 23.4  h(冬至)= 90 − 緯度 − 23.4  h(春秋分)= 90 − 緯度 国立天文台の公式。任意の日は緯度に太陽の視赤緯δを加えます。
札幌 夏至 70.4° 712mm 東京 夏至 77.8° 432mm 那覇 夏至 87.2° 98mm 窓高さ2.0m・南面。庇の出は3枚とも同じ縮尺です。 冬至も札幌23.5°/東京30.9°/那覇40.3°と17°近い差があります。
同じ窓、同じ「夏の日射を切る」条件でも、必要な庇の出は札幌712mmから那覇98mmまで7倍以上違います。冬至の日射高度も札幌23.5°と那覇40.3°で17°差。パッシブデザインは地域固有の設計です。
D ≧ (Hw + d) ÷ tan h  S = D · tan h − d D=庇の出、Hw=窓の高さ、d=庇が窓上端より上にある量、S=窓上端から降りる影。

落とし穴は8月下旬から9月上旬です。この時期の太陽高度は60°台まで落ちるので、夏至基準の庇では遮蔽不足になります。東京・窓高さ2.4mなら夏至78°で51cmですが、8月末の63°では122cmが必要です。実務の目安は「窓高さの30〜50%の出幅」。

一方で、同じ地点なら夏至と冬至の差は46.9°(=23.44°×2)で一定です。緯度が変わると南中高度が上下に平行移動するだけ。だから「自分の敷地の緯度」を一度押さえれば、夏と冬の両方が同時に決まります。

都市別の南中高度——北と南で17°違う

札幌と那覇の差は、夏至で16.8°、冬至で16.8°。必要な庇の出は712mmと98mmで7.3倍です。屋根の軒の出も太陽光パネルの傾斜角も、この差の上に決まります。

都市緯度夏至春秋分冬至窓2mを夏至に遮る庇
札幌43.06°N70.4°46.9°23.5°712mm
仙台38.27°N75.2°51.7°28.3°528mm
東京35.69°N77.8°54.3°30.9°432mm
名古屋35.18°N78.3°54.8°31.4°414mm
大阪34.69°N78.7°55.3°31.9°400mm
福岡33.59°N79.8°56.4°33.0°360mm
那覇26.21°N87.2°63.8°40.3°98mm
那覇のような低緯度では南面より東西面の朝夕の日射が支配的になり、庇では対応できません。

太陽光を載せるなら、傾斜角より方位

方位発電量比(南=100)地点最適傾斜角近い屋根勾配
南100%札幌34.8°7寸
南東・南西96%八王子33.0°6.5寸
東・西83%名古屋32.5°6.4寸
北62%大阪29.2°5.6寸
——那覇17.6°3.2寸

地点ごとに傾斜角を最適化しても、年間日射量の上積みは最大でも約2%。神経質になるべきは傾斜角ではなく方位です。片流れの本当の利点は、切妻が北面(62%)を抱えるのに対し、屋根全面を100%係数で使えることにあります。

出典:国立天文台、太陽光発電協会、方位別比率と地点別最適傾斜角はソーラーパートナーズ(NEDO日射量データベースに基づく)、最適化の効果はエネがえる。
雨

雨:本当の防水層はルーフィング

国総研の散水試験では、4寸勾配のJ形瓦でも風速20m/sで220mL、25m/sで300mL、風速30m/sでは950mL(1㎡・1分あたり、軒先流量5L/m・min)の水が屋根材の下に入りました。屋根材は水を流す部材で、止める部材は下葺材です。

豪雨は実際に増えている

1時間降水量1976-85年平均2015-24年平均倍率4℃上昇時の予測
50mm以上約226回約334回約1.5倍約3.0倍
80mm以上約14回約24回約1.7倍約3.0倍
アメダス1,300地点あたりの年間発生回数。出典:気象庁「日本の気候変動2025」。屋根100㎡・降雨強度120mm/hなら雨水量は12m³/h ≒ 3.3 L/s、バケツ約20杯が毎分落ちてくる計算です。

軒の出があるかないかで、5倍違う

軒あり 壁が濡れない範囲 Hs = 0.9 × 軒の出 ÷ 風速 軒ゼロ 取合いに直撃 雨漏り 約5倍
軒の出pによる壁面の雨がかり遮蔽高さは Hs = 0.9 × p ÷ U₁₀(p=軒の出、U₁₀=地上10mの平均風速/国総研)。風が強いほど遮蔽効果は小さくなります。軒ゼロは屋根と外壁の取合いを直接風雨に晒します。

日本住宅保証検査機構(JIO)が2010年7月から2016年6月の保険事故を分析した結果、雨漏りの71.8%が軒の出のない箇所で起き、軒ゼロ住宅の雨漏り発生確率は軒のある住宅の約5倍でした。「軒ゼロ」の定義は柱心から軒先まで250mm以下、けらば・棟で150mm以下。

住宅瑕疵保険の事故情報データベース(2009〜2023年、木造戸建約15,000件)では、浸入箇所は外壁開口部29.6%、外壁面26.2%、勾配屋根・天窓20.2%。新築木造戸建の保険事故は9割以上が雨漏りです。

出典:JIOデータ(日経BP『雨漏りトラブル完全解決』所収)、住まいるダイヤル、国総研。

緩勾配で起きる4つのこと

毛細管現象

重なり部の微細なすき間に、重力に逆らって水が吸い上げられる。砂埃が堆積すると媒体になり吸上げ量が増す。対策は縁切り/タスペーサー(100㎡で約1,000個)。

逆流・滞留

流下速度が落ちて水が留まり、屋根側から浸入する。同じ勾配でも流れ長さが長いほど水膜が厚くなる。

吹き上げ

強風時に雨が斜めや上向きに走り、重なり部の水を軒先から棟方向へ押し戻す。重ね代だけでは吸収しきれない。

谷部・壁際の集中

2面分の雨水が線状に集中し、単位長さあたりの水量が跳ね上がる。谷樋と壁際は勾配と別の設計問題。

勾配×流れ長さ(KMEWカラーベスト・一般施工地域/切妻・片流れ)

勾配基準A基準B基準C個別対応
2.5/10以上—5m12m15m
3/10以上7m10m17m21m
3.5/10以上10m15m25m30m
4/10以上13m19m32m39m
4.5/10以上16m24m40m—
5/10以上20m30m——
6/10以上————
A・B・Cは棟からの流れ長さによる区分で、区分ごとに必要な下葺材のグレードが変わります。基準A=下葺材①②(NEOシート同等品以上1層敷/同2層敷またはアレスガード1層敷)、基準B=下葺材③④、基準C=下葺材⑤。6/10以上の欄は原典で空欄です。下葺材のグレードを上げると同じ勾配でより長い流れに対応できる——この構造が理解できると、屋根材のカタログの読み方が変わります。寄棟はさらに厳しく、3/10以上でA=5m・B=7m・C=12m。出典:KMEW設計・施工基準。

ルーフィングの法定規定

国土交通省・住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準 第7条で、品質はJIS A 6005適合のアスファルトルーフィング940以上、重ねは流れ方向100mm以上・左右200mm以上、谷部と棟部は両方向に250mm以上、壁との取合いは壁面に沿って250mm以上かつ雨押え上端より50mm以上立ち上げ、と定められています。

出典:国土交通省・設計施工基準。
雪

雪:屋根の自重の4〜7倍が載る

多雪区域で垂直積雪量150cm・4寸勾配なら、積雪荷重は約4.1kN/㎡。瓦屋根の自重0.6〜0.9kN/㎡に対して4〜7倍が上に載ります。雪国の構造設計が別物になる理由です。

S = ρ × A水平投影 × d × μb  μb = √cos(1.5β) 施行令第86条。ρは積雪1cmごとに1㎡あたり20N以上、多雪区域は30N以上。勾配60°超はμb=0とできます(雪止めがある場合を除く)。
条件単位荷重垂直積雪量μb積雪荷重
一般区域・陸屋根20 N30cm1.000600 N/㎡
一般区域・5寸20 N30cm0.876526 N/㎡
多雪区域・4寸30 N150cm0.9174,127 N/㎡

垂直積雪量は市区町村で決まる

市(北海道)垂直積雪量備考
小樽市150cm—
札幌市140cm南区の一部は190cm
江別市140cm—
旭川市130cm江丹別の一部は230cm
帯広市130cm—
北見市100cm—
函館・室蘭・釧路・苫小牧70cm—
多雪区域の指定は「垂直積雪量1m以上」または「積雪の初終間日数の平年値が30日以上」(平成12年建設省告示第1455号)。垂直積雪量は d = α·ls + β·rs + γ(標高と海率)で算定され、特定行政庁が規則で定めます。出典:北海道、告示1455号。

落とすか、落とさないか

落雪型(急勾配) 飛距離を隣地境界まで離す 縦どい φ100以上 無落雪(M形・3〜15/100) スノーダクトに集水し屋内で排水 パラペット120mm以上
北海道では急勾配で落とすのではなく、緩勾配のM形にして中央のスノーダクトに集水する方式が標準化しています。
N > ρ · H · (sin θ − μ cos θ) ÷ Y 雪止め金具の必要個数(個/㎡)。倶知安町の算定条件(H=2.3m、ρ=3kN/m³、Y=0.6kN/個、μ=0.1)で、3寸〜10寸勾配で4.11〜7.32個/㎡。

式の (sin θ − μ cos θ) が正になるのが滑り出す条件、つまり tan θ > μ です。鉄板の動摩擦係数 μ=0.1 なら約5.7°(1寸)を超えれば理論上は滑り出します。逆に「滑らせない」には雪止めか無落雪形状しかない。3寸でも4個/㎡超の雪止めが必要になるのがその証拠です。

すが漏れは、室内熱で屋根上の雪が下から解け、冷たい軒先で再凍結して氷の堤を作り、堰き止められた水が重なり部を逆流する現象。対策は断熱強化と小屋裏換気の両方で、屋根材の選択では解けません。

出典:無落雪(M形)屋根 設計施工基準、倶知安町 雪止め金具設置早見表。
風

風:屋根は上から押されず、下から剥がされる

屋根被害の主犯は負圧(吹き上げ)です。しかも同じ屋根の中で、隅角部は一般部の約1.7倍を受けます。これが「四隅と軒先を留める」理由です。

W = q × Cf  q = 0.6 · E · V0²  E = Er² · Gf 施行令第87条。V₀(基準風速)は30m/s(全国のその他の地方)〜46m/s(沖縄県・鹿児島県の指定地域)。屋根ふき材(告示1458号)ではGfの代わりにピーク係数Gpeを用い、地表面粗度区分IVでも区分IIIの数値を使います。
一般部 −2.5 Cpe(負のピーク外圧係数) 周辺部 −3.2 −4.3 −5.4 隅角部は勾配10°以下で−4.3、20°で−5.4 軒裏面の負のピーク外圧係数は −2.1
屋根平面の負圧分布(告示1458号 表3)。勾配30度以上では隅角部も−3.2に戻るため、20度前後が最も不利になります。軒裏面のピーク外圧係数が負で−2.1なのは国総研「屋根ふき材の耐風診断マニュアル(案)」の値で、軒先は上下から引き剥がされます。部位区分の寸法は告示の図に規定されています。

速度圧の計算例(住宅規模)

粗度ErV₀=30V₀=38V₀=46
I(H=8m)1.1967721,2391,815
II0.9604987991,171
III・IV0.800346554813

粗度III・V₀=38m/s・H=8m なら q=554 N/㎡。隅角部(θ≦10°)の Cf は約 −13.3 になり、W ≈ −7,400 N/㎡(約−740kgf/㎡)。一般部は約 −4,300 N/㎡です。内圧係数の扱いで数値は変わるので一例として。

ここで勾配の話に戻ります。負圧は20°(約3.7寸)付近で最大の−5.4になります。「緩勾配は風に強い」と単純に書くと、告示の値と矛盾します。

2022年1月、瓦は全数緊結が義務になった

—従来改正後(令和4年1月1日以降)
緊結範囲軒・けらば(端部から2枚まで)のみ軒・けらば・むね・平部のすべての瓦
軒・けらば—3本以上のくぎ等で下地に緊結
むね—冠瓦をねじで芯材に緊結
V₀ 38〜46m/s—F形は使用不可。J形・S形の防災瓦は1本
昭和46年建設省告示第109号の改正。「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」は、この改正告示において耐震性・耐風性が確保された緊結法として位置づけられました(対象範囲は基準風速40m/s以下・粗度区分III)。出典:国土交通省、全日本瓦工事業連盟。

台風15号が示したのは、屋根材より施工品質と経年

屋根材(かっこ内は棟数)被害率
粘土瓦 J形(築30年程度 25棟)96%
粘土瓦 F形(全数釘留め 6棟)0%
化粧スレート(2〜2棟)0〜50%
金属屋根(1〜1棟)100%
築年数被害率
築10年未満0%(0/7棟)
築20年程度33〜50%
築30年程度96〜100%
築40年以上100%(材種を問わず)

全数釘留めのF形瓦6棟は被害ゼロでした。一方、屋根下地ごと飛散した10棟は化粧スレート5棟と金属屋根5棟で、瓦屋根はゼロ。屋根材の種類を選ぶ前に、留め方と経年のほうが効いているという話です。全日本瓦工事業連盟・全国陶器瓦工業組合連合会の合同調査(視察2019年9月19日、南房総市富浦付近56棟、うち2階建て49棟を分析)。屋根材別の被害率は母数が1〜2棟の区分があるため、傾向としてお読みください。

形状と耐風性についても整理しておきます。建築研究資料No.142によれば、寄棟屋根の外圧係数の性状は切妻と異なるものの多くの部分で似た性状を示すため、告示では切妻の数値を準用しています。つまり「寄棟が構造的に圧倒的に強い」という法令上の単純な差はありません。片流れが不利なのは、風上側の1辺がそのまま長い軒先とけらばになり、負圧が最大化する周辺部・隅角部の割合が大きくなるからです。

そして軒の出は、雨仕舞いには圧倒的に有利(軒ゼロは雨漏り約5倍)ですが、耐風では不利(軒裏負圧−2.1)。結論は 軒を出す+緊結を強化する の両方です。

出典:全瓦連 台風15号 視察報告、建築研究資料No.142、告示1458号、国総研 屋根ふき材の耐風診断マニュアル(案)。
地

あなたの地域の屋根は、何に備えるのか

都道府県を選ぶと、県庁所在地の緯度から南中高度と庇の出、設計用降雨強度から必要な雨樋の径、そして注意すべき自然条件を表示します。

基準風速 V₀ は要確認
V₀ は過去の台風の記録に基づき30〜46m/sの範囲で地域ごとに定まります(沖縄県・鹿児島県の指定地域が46m/s)。都道府県単位では決まらないため、ここでは表示していません。建設地の値を必ず確認してください。
垂直積雪量も市区町村単位
垂直積雪量は標高と海率から算定され、特定行政庁が規則で定めます。同じ市内でも札幌市南区の一部190cm、旭川市江丹別の一部230cmのように大きく違います。表示は目安です。
設計用降雨強度は実務で用いられる地域値で、原典は空気調和・衛生工学会規格 SHASE-S 206 本体です。たて樋の径は100mm/h基準の許容最大屋根面積を地域の降雨強度で補正して選定しています(屋根面積100㎡と仮定)。
材

屋根材を商品単位で比べる

カテゴリではなく商品名で比べます。列見出しをクリックすると並び替わります。価格はメーカー希望小売価格(材料のみ)ではなく工事単価(材工共・税抜)の相場で、足場と撤去処分は別です。

代表商品 メーカー 工事単価 円/㎡ 重量 kg/㎡ 耐用年数 標準勾配 寸 条件付き 寸 メンテ周期

選ぶときの4つの軸

重量

瓦41〜44kg/㎡に対し金属は約5kg/㎡で、およそ10倍の差。耐震等級を上げたい、狭小3階建て、カバー工法で重量を増やせない——これらは重量が最初に効く。

勾配

緩勾配のモダンな箱型なら立平(0.5寸)かシングル(1.5寸)。2寸対応の平板瓦が出たことで、緩勾配でも瓦が使えるようになった。

気候

凍害・塩害は石州瓦(1,200℃焼成)、海岸線500m以内はSGLでも保証除外になりがちでステンレスかアルミ。豪雪地は滑雪性と雪止め設計。

ライフサイクル

化粧スレートは5〜10年ごとの塗装が前提で、足場代込みの生涯コストで比較すると金属や瓦との差が縮む。石粒付き金属は塗装メンテ不要。

2006年より前のスレートは、塗装できないことがある

各社が1990年代後半から2000年代前半にノンアスベスト化した際、十分な耐久試験なしに切り替えたため初期品に不具合が出ました。ニチハのパミールは層間剥離(ミルフィーユ状に剥がれる)と付属釘の腐食によるズレ・脱落が起き、塗装ができずカバー工法か葺き替えになります。コロニアルNEO、グリシェイドNEO、ザルフ、アーバニー、シルヴァス、レサス、セキスイかわらU(ノンアス版)も同じ系統です。

アスベストは2004年に1%以上含有が、2006年に0.1%以上含有が全面禁止されたので、2006年以降の建物はノンアスベスト確定。それ以前の既存スレートは調査コストが上乗せされます(撤去処分+1,800円/㎡)。見分け方は働き幅の切り欠き形状です。

出典:テイガク単価表、同 屋根材比較、パミール(石川商店)、アスベスト法規制史(CIC)。
葺

下葺材:1万円の差で、10年が30年になる

屋根材が30年持っても下葺材が10年で終われば意味がありません。そしてグレードを1ランク上げても、屋根全体での価格差は約1万〜2万円です。

種類価格目安耐用年数位置づけ
アスファルトルーフィング940約8,000円/巻約10年法令上の最低グレード(JIS A 6005)
改質アスファルト(ゴムアス)約10,000円/巻約20年現在の事実上の標準
高耐久改質アスファルト約14,000円/巻約30年マスタールーフィング等
透湿ルーフィング(高分子系)—50年(メーカー訴求)屋根断熱・通気層設計とセットで機能

用途で決まる

瓦屋根

タディス ブラッサム等の瓦専用品。瓦桟のためのエンボス加工と通気。

カバー工法

粘着層付き(タディス セルフ カバー 0.6mm)。既存屋根の凹凸に追従する。

緩勾配 2.5寸未満

粘着層付き必須。多くの屋根材が「粘着層付ルーフィング使用時◯寸から」と規定している。

屋根断熱・小屋裏なし

透湿ルーフィングを検討。ただし通気層設計とセットでなければ機能しない。

最悪の組み合わせは、SGLフッ素(30年超)+ルーフィング940(10年)です。屋根材の耐用年数に下葺材を合わせる、という一行が下葺材選びのすべてです。

出典:ルーフィングの種類(テイガク)、透湿ルーフィング比較(建材ダイジェスト)、田島ルーフィング。

もっとマニアな知識

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屋根マニア / 株式会社Amigo・オサック「マニアな知識」
数値は原則として一次資料(法令・告示、メーカー施工要領書、公的機関)で確認しています。二次情報は本文中に引用元を明記しました。法令の適用と設計値は建設地の特定行政庁の規則によります。